約 82,657 件
https://w.atwiki.jp/sinsougou/pages/778.html
水銀燈「…くっ」 シン「…」 水銀燈「シン?なんで私がこんな格好しなければいけないのかしら?」 シン「し、しらん。なんか中の人がブログかなんかでバニーガールやっちゃったから なんじゃないかな?」 水銀燈「なんで私がバニー服なんて着なきゃいけないのよ!」 めぐ「似合ってるわ、水銀燈」 水銀燈「め、めぐっ…あ、あなたまでなにそんな格好してるのよ!」 めぐ「似合わない?」 水銀燈「似合う似合わないとかじゃなくてあなた一応びょうに…シン? 何鼻の下伸ばしてるのかしら?」 シン「の、伸ばしてねぇっ…」 めぐ「仕方ないわ水銀燈、アスカさん思春期だもの」 シン「お前も充分思春期だっ!!」 うん、なんか田中理恵がバニー姿だったもんだからつい 名無しさん小ネタ-03へ戻る 一覧へ
https://w.atwiki.jp/rozenrock/pages/224.html
真紅がマンションのカギを開けるとそこには水銀燈、翠星石、金糸雀の 3人がニヤニヤと笑いながら立っていた。 「真紅ぅ~。見たわよぉ~、ウフフフ。あれジュンでしょォ~?」 「と、都会の男は狼なのですぅ~」 真紅が商店街の真ん中で言ったセリフをマンションに帰ろうとしていた 水銀燈達に聞かれそのまま見られていた。 「カナ達は真紅と彼氏の少し前を歩いていたかしら、いきなり後ろから 真紅の声が聞こえて見たら、フフフフだったかしらァ~」 「ちょっと金糸雀、フフフって何んなの?私とジュンは何もないのだわ!」 ムキになる真紅に悪戯っぽく微笑む水銀燈。 「そぉ~お?真紅とォ、ジュンてぇイイ感じに見えたわよォ~」 「勘違いしないで頂戴、水銀燈!」 水銀燈の言葉でさらにムキになる真紅。その横で翠星石は携帯を 取り出しメールを打ち始めた。 ~真紅に男ができた。チビでメガネ野郎な男と昼間から公園で キスをしながら抱き合う真紅と~ 「誰にメールしてるの翠星石。ちょっと見せなさい!」 素早く翠星石の手から携帯を取り上げメールを読む真紅の顔色が 変わると翠星石の姿は一瞬の間に消えていた。 水銀燈の部屋に立てこもる翠星石。そのドアを壊す勢いで叩く真紅。 「止めなくてイイのかしら?」 「イイんじゃなァ~い」 そういいながら水銀燈は冷蔵庫からビールを取り出し飲み始めると 水銀燈の携帯が着信を知らせる。 「あっメグぅ~。久しぶりじゃないぃ。どうラプラスは順調ォ~?」 「そのラプラスのことなんだけど、今ねCDを作ってるのよ」 ラプラスの曲を聴いたN’sレーベル側はその音楽性の高さとオディールの 聴く者を魅了する美しい声と歌唱力を高く買い、2ヵ月後のメジャー デビューを計画し始めていた。すでに曲は出来上がりCMのタイアップも 取り付け録音最終状態だとメグは水銀燈に知らせる。 「凄いじゃないメグぅ~!」 「うん、そうなの、私達ラプラスにとって信じられないくらいのチャンスよ」 メグの喜ぶ顔が受話器越しに見え、ついつい水銀燈の表情にもメグと同じ ような笑顔がみられた。 「それでね、水銀燈。ちょっとお願いがあるの」 「なぁに、お願いってぇ?」 ラプラスがデビューに向けて取り組んでいる曲は壮大なバラードで あった。それはCMのタイアップである車メーカーが提示した男女の 出逢いがもたらす喜びと悲しみを表すイメージにピッタリなのだが、 ラプラス達はあと少しの広がりと奥深さを曲に入れたかった。 そこでラプラス達が考え出した答えが真紅と水銀燈にサポートメンバー としてレコーディングに参加してもらうことであった。 「えっ、私と真紅がレコーディングに参加ァ?」 「そうよ、お願いできるかしら水銀燈?」 「もちろんよぉ、もちろん参加するわぁメグぅ」 その4日後、真紅、水銀燈、翠星石、金糸雀はレコーディングスタジオ の中にいた。 「すげぇのですぅ、翠星石達がいつも借りてるスタジオとはまるっきり 機材が違うのですぅ~」 「あたり前でしょォ~。恥ずかしいから、あまりキョロキョロしないでよぉ」 ガラス越しにラプラスが作った曲に合わせ、イヤホンを耳にあて目を閉じ 感情を入れて熱唱するオディール。 (これがプロになった人の唄なのだわ・・・) ほんの前までは同じ道を歩いていたラプラス。それが今ではこうして数多く のスタッフに支えられ主役として真ん中にいるラプラス。 スタートラインは一緒であったのに気付くと遥か前を走り始めたラプラス。 真紅達は複雑な心境で歌うオディールの姿を見つめていた。 オディールの歌を録り終えたテープを聴きながら真紅と水銀燈はメグの 説明を受ける。 「このパートで真紅ちゃんにコーラスとして入ってもらいたの。水銀燈は 私が弾くギターにいつもの水銀燈らしいトーンで入ってきて欲しいの」 説明を一通り聞くと真紅と水銀燈は先ほどオディールが歌っていた部屋に 入り今度はメグ達ラプラスがガラス越しに真紅達を見る。 「まずは慣らしの練習からです」 スタッフの指示の元でやや緊張しながらもイヤホンをつける真紅と水銀燈。 そしてラプラスのメロディーが流れ出し、その音に体を預ける真紅と水銀燈。 真紅のパートが近づく。フゥ~、ゆっくりと深呼吸し胸に空気を貯める真紅。 次の瞬間、ガラス越しに様子を見ていた全てのスタッフの動きが止った。 真紅のハリがありどこまでも伸びていくような声に聴き入るスタッフの人達。 オディールとは正反対の声質を持つ真紅の声が絡み合うようにオディールの唄 と溶け合っていく。そこに水銀燈のギターが独特のトーンを伴って同じように メグのトーンと融合していく。 「すげぇ、これ、そのまま録音してもOKじゃねぇの?」 レコーディングスタッフはそう言ったままガラス越しに真紅と水銀燈 を見つめていた。 それは真紅達にとって今まで手探りで探していた道、その道の向こうにある 扉がチラリと見えた、そんな瞬間であった。 歌い終わると真紅はガラスの向こうで見ている翠星石と金糸雀に目を向ける。 「凄ェのですぅ、みんな真紅と水銀燈にビビってるですぅ~!」 防音ガラス越しに声を出している翠星石の言葉は真紅と水銀燈には聞こえない が、呆然と真紅と水銀燈を見つめるスタッフ達と金糸雀の笑顔が全てを 物語っていた。 「何なのあの子たち・・・凄いわ」 「あっ、そうかミッちゃんは薔薇乙女の歌を聴くの初めてだったよね」 大学でメグ達と知り合いラプラスに入ったミチコは今始めて聴いた真紅の 歌と水銀燈のギターに驚きを隠しきれない表情になる。 そんなミチコを巴はクスッと小さく笑う。 「ねッ、前に言ったでしょ。私達ラプラスにとって最大のライバルは まだインディーズで曲すらだしていない女の子7人組みのバンドだって」 含み笑いで説明する巴のほうを向きさらに驚きの表情で聞くミチコ。 「じゃぁ、あの子達が前に話していた薔薇乙女の子なの?」 「そうよ。ほら、そこにいる2人もそうよ。翠星石ちゃん。金糸雀ちゃん」 巴はそう言い翠星石と金糸雀の肩を叩き新しくラプラスに入ったミチコを 紹介する。 「彼女は同じ大学でラプラスに入った碧みちこよ」 「こ、こんにちはラプラスでキーボードをヤルことになった碧みちこです。 ヨロシクね、えぇ~と翠星石ちゃん、カ、カナ・・・」 「カ・ナ・リ・ア。私の名前は金糸雀かしらッ」 防音ガラス越しに金糸雀とミチコが話しているのを見る水銀燈。 「ねぇ真紅ぅ。なんだか向こうが騒がしいわねェ。私達、ドジッたァ~?」 「さぁ、解らないのだわ。ただみんな私達を見ているのは確かね」 その時、いきおいよくドアが開きラプラスのマネージャーが入ってくる。 「こんにちは、私はラプラスのマネージャーの山本と申します」 そういい山本は真紅と水銀燈に名刺を差し出す。 「ラプラスのマネージャ~?」 水銀燈の言葉に山本はコクッとうなずき話を切り出す。 「君達の歌とギターはウチのラプラスから聞いてました。しかし 今こうして初めて聴き非常に興味が出てきました」 山本の言葉に水銀燈はあの日のENJUの白崎の言葉を思い出しイラツキ気味 に小さく言葉を出す。 「なぁにぃ?興味てェ~」 「単刀直入に言います。真紅さん、水銀燈さん。N’sレーベルから 曲を出してみませんか?」 (4)へ戻る/長編SS保管庫へ/(6)へ続く
https://w.atwiki.jp/rozen-yuri/pages/190.html
飛び交う黒い羽 それを切り刻む重たい鋏 二人は自分の命を賭けたゲームの真っ最中だった 「ああしつこいわぁ、とっととやられちゃいなさいよぉ」 「それはこっちの台詞だね水銀燈」 両者一歩も譲らない闘いに見えたが、僅かに水銀燈の顔に余裕が見える 「これでくたばりなさぁい!」 「くっ…!」 襲いかかる羽に鋏だけでは対応できず、堪らず蒼星石はその場から離れた 「ちょっとぉ、逃げるならローザミスティカ置いてきなさいよぉ」 「………ッ!」 「あはは!無駄よ無駄よぉ!いくらでも追いかけてあげるわ…っ!?」 世界が変わると同時に突然声のトーンが変わる水銀燈 蒼星石は不思議に思い後ろを振り向いた 「な、なにこの世界いぃ…」 蒼星石が何も考えずに飛び込んだその世界は、透明度の高い水が流れるなんとも美しい世界だった しかし、青く澄んだ水のように、水銀燈の顔も青冷めてゆく さっきまで大きく広げていた羽は水銀燈の体を包むように畳まれている 蒼星石はその情況を上手く飲み込めないまま、とりあえず隙ありというかんじで鋏を水銀燈の首元にあてがった 「…! しまった…」 「さあ水銀燈、そのまま手を頭の上にあげてしゃがむんだ」 「い、いやよぉ…やめてぇ…」 「? ふざけるのはやめるんだ、さあ早く言われた通りに…」 「いや…やめてよぉ…」 「!?」 蒼星石はぎょっとした あの水銀燈が涙を零している 「す、水銀燈…?」 「やめてぇ…羽濡らさないでぇ…」 「え?」 「水怖い…いやぁ…」 「はあ!?」 ・ ・ ・ 「落ち着いた?」 「………ありがとう」 「…びっくりしたよ」 「…死にたいわぁ」 聞くと、どうやら水銀燈は水が苦手らしい 羽が濡れると力が抜け、震えが治まらないんだとか 「それじゃあ、泳ぐなんてもっての他なんだ?」 「…たしか蒼星石は、泳ぎが得意だったわよねぇ」 「お父様は、アリスは泳げる泳げないは関係ないって言ってたけどね…」 「でもいいじやない…羨ましいわぁ…」 「水銀燈、君…泳げるようになりたいのかい…?」 水銀燈は何も言わずに俯いた 「……僕が…教えてあげようか」 「……え」 水銀燈は再び顔を上げ、蒼星石と見つめ合った 「いいわよぉ…こうやって助けてくれただけでありがたいわぁ…」 「でも…泳げるようになりたいんだろう?」 「…………いいのぉ?」 「もちろんだよ」 「なんか悪いわぁ」 「いいんだよ、ふふふ」 「…何その笑い」 「君の水着姿、楽しみだよ」 「なっ……!」 「あはは、じゃあ明日からここで特訓ね?」 僕らだけの秘密の場所だよ そう言う蒼星石に、青かった水銀燈の顔は、赤く色付いたんだとか END
https://w.atwiki.jp/niko2/pages/391.html
人はそれを―― ◆0RbUzIT0To (非登録タグ) パロロワ ニコニコ動画バトルロワイアル 第170話 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 橋の下でずっと潜伏をしていた少女は、その大きな音を立てて起こった水飛沫を見て酷く驚愕した。 まさかあいつがやられたのだろうか?喧騒の音は潜伏している間も常に聞こえていたが、それでも負ける事は無いだろうと思っていた。 幾ら相手が七人もの大人数とはいえ、自分が原因でばらばらになっていたのだ。 一人一人を確実に仕留めれば、例え七人もの戦士がいようとも彼が負けるとは思えない。 彼には付き従う二匹の化け物がいたし、彼自身も相当な強さを持っていると豪語していたのだから。 それほどまでに言うのだから、彼を送り出したのだ。 「……冗談じゃないわよ」 もしも、七人を殺せてないのだとしたら計画はおじゃんだ。 仲間に合わせる顔が無い。爪を噛みながら少女は立ち上がり、川辺を見渡す。 ――見つけた、彼が息も絶え絶えになりながら岸に上がり呼吸を整えている。 「ちょっと! 何やってんのよ、早く殺してきなさい!!」 思わずその彼の元まで駆けてゆき、ヒステリックに叫ぶ。 しかし、彼は少女には一瞥しただけで何も言わず、立ち上がってその水を吸った服を脱ぎ始めた。 慌てて少女は後ろを向くも、怒りはまだ収まらない。 何を悠長に服を乾かそうとしているのか、こうしている間にあの七人が逃げたらどうする? そう問いかけようとした瞬間、彼の冷たい声が聞こえた。 「――無駄だ、もう遅い」 「……え?」 「一人は消した……だが、他の奴には逃げられた」 「逃げられた……? ッ、何やってんのよ!! 私は全員殺せって言ったはずよ!!!」 彼の生まれたままの姿が目に入ったが、そんなの気にしている場合ではない。 肩に掴みかかり、激昂する。 しかし、彼は何も言わずただ冷ややかな目を少女に向け。 その平手で、頬を叩いた。 「なっ!?」 「うるさい、黙れ……俺がお前の指示を聞く義務は無い。 お前に文句を言われる道理も無い。 お前はただ俺に情報を提供しただけだ、そして俺はそれに乗ったまでだ……違うか?」 頬を押さえながら後ずさりする少女に、彼は冷淡に告げる。 それはその通りだ、彼が少女の命令を聞く必要性は無い。 「でも……っ、話したと思うけれど、あいつらを逃がしたら大変な事になるのよ!? あんたが確実に殺せるっていうから私は……」 「問題無い……奴らはばらばらに逃げた、はずだ。 再び合流する事は絶望的だろう」 「でも……」 「でももさっても無い、事実だ。 わかったならば喚くな、叫ぼうと事態はよくならん」 冷静な彼の言葉に、更に憤りを感じながらも少女はその口を噤んだ。 あまり彼には逆らえない……彼もまた、ゲームに乗った人物。 自分の言葉が度が過ぎたなら、彼は容赦なく切り捨てるだろう。 彼は脱いだ服を手ごろな大きさの岩にかけ、その横に座り込む。 すると、その時橋の上からサナギの化け物が帰ってきた。 「……喜べ、どうやらもう一人消せたそうだ。 虫の息のままここを逃げたらしいが、時間の問題らしい」 「……そう」 素直には喜べない。 二人を殺したところで、まだ五人も残っている。 その何れかがもしも萃香と合流してしまっては計画が破綻してしまう。 少女――涼宮ハルヒは、再び爪を噛みながら思案をしていた。 ハルヒはレナ達の下を逃げ出してから、橋の方向へと走っていた。 勿論、橋を渡ろうとした訳ではない――わざわざ城方向へと出向く訳がない。 ハルヒが目をつけたのは橋の下……この何も無い平原では唯一隠れる事の出来る場所だ。 もしも見つかりそうになっても、川の中に忍び込めば夜の帳は下りている――見つかる可能性は低い。 そう思い、しばらくの間橋の下で様子を見ようとした時――橋の下には先客がいた。 ハルヒはそれを隠れながら聞き、彼らが殺し合いに乗り気だという事を知った。 そして、中々の知能犯であり自分達と同じく乗ってない連中の団結を危険視しているという事も。 しかし、声をかけようとした瞬間にハルヒは見張りをしていたクリサリモンに見つかった。 すぐさま殺しに掛かろうとした二体のクリサリモンを――ハルヒは言葉巧みに説得して、自分もTASの仲間だと言い張った。 その後、エアーマンを見送ったTASにお目通りし、自分達の持っている情報を提供した。 塔にいる人間、橋に向かっている人間、その特徴と戦闘力の大まかな情報。 自分の知るものは全て語り――そして、TASの信用を得た。 TASにとって、ハルヒはいつでも殺せる事が出来るが手数にはなる希少な仲間。 向こうから接触をしてきたのを断る理由も特に無い。 ハルヒにとっては、レナ達を萃香達と合流させないようにするのが第一目的である。 だが、もし仮に彼女達を殺せるというのならばそれに越した事はない。 TASにはレナ達を殺せるという絶対的な自信があったようだし、それに加えてクリサリモンの力もあった。 だからこそ、ハルヒはTASに全てを任せてレナ達を襲うのを影ながら見守っていたのである。 しかし、最悪の事態になってしまった。 TASは五人もの人間を逃がしてしまい、その彼女達の行方は知れない。 「最悪よ……」 ハルヒは頭を抱えて蹲る。 彼女達が萃香のいる場所から離れた場所にいるのかもしれないが、その逆もまた在り得るのだ。 もしも合流されてしまえば、全ては終わってしまう。 蹲るハルヒの横で、TASは静かに呼吸を整えていた。 その手にあるのはキバが持っていた支給品。 ロールバスターをその腕に装着して試し撃ちをしてみる……中々の威力だ。 ふと、これを使われ攻撃された己の腹を見てみる……酷い火傷になっていた。 水面へとぶつかろうとしたあの時、TASは咄嗟にキバの束縛から逃れた。 ゴールを確信したキバが、直前になってようやくその戒めの力を緩めたのだ。 それを察知したTASは即座にキバを踏み台にして高く飛び、水面との正面衝突を避ける事に成功した。 しかし――とTASは考える。 もしもキバが、あのまま力を緩めていなかったなら? もしもキバが、あのように傷だらけではなく万全の体勢であったなら? 恐らくは自身も水に叩きつけられ息絶えていたに違いない。 「認識を……改める必要性がある」 TASはあの瞬間、一瞬だけだがキバに恐怖心を覚えた。 ただの凡人であるキバに、超人であるTASがである。 「このゲームは凡人、超人は関係ない……油断した奴から死んでいくゲームだ」 もう二度と油断をする訳にはいかない。 死が間際に迫った事で、ようやくTASはその慢心に似た過信を捨てた。 「どれだけ弱い人物だろうと、徹底的に叩きのめす」 獅子搏兎――獅子は兎を狩るのにも、その全力を尽くす。 その冷たい瞳に静かな闘志を燃やし、TASは静かに支給品を見てゆく。 【D-2 橋の下/二日目・深夜】 【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】 [状態]:富竹への憎しみ、精神錯乱、左肩に銃創、左脇腹と顔面と首に殴られた傷、腕から出血、脇腹に弾丸がかすった傷、古泉達を信頼、鎮痛剤服用、理性を失いかけています [装備]:陵桜学園の制服@らき☆すた、包丁、 DCS-8sp [道具]:支給品一式*2、びしょ濡れの北高の制服@涼宮ハルヒの憂鬱、テニスボール、 アニマルマスク・サラブレット@現実、ゾンビマスク@現実(ゾンビーズ) 毒入りパン、小型爆弾*2 [思考・状況] 1.塔組(レナ達)に入り込み、萃香のネタや毒入りパンを使って掻き回す……つもりだったけど、どうしたものかしら。 2. 塔組の足をとにかく引っ張り、行動し難くする。 3.どんな手段を使ってでも絶対に富竹を殺す 4.皆を蘇らせるために協力者を探す 5.優勝して全てを元通りにする ※第三回定時放送をほとんど聞いていません。死亡者の人数のみ把握しました。 ※自分の服装が、かがみを勘違いさせたことを知りました ※自分が狂い掛けている事に薄々気づいています ※喋れる様になりました。 ※自分の能力を信じました。 【TASさん@TAS動画シリーズ】 [状態]:右手親指以外欠損、左拳骨にヒビ、腹部大火傷、全身打撲、全裸、弱者にも相手にも油断しない覚悟 [装備]:五寸釘1本@現実(ポケットの中に入っています)、ロールバスター@ロックマンシリーズ [道具]:支給品一式*5(食料五食分・水四食分消費)、桃太郎印のきびだんご(24/25)、 ウルトラスーパー電池(残り30%)@ドラえもん、メタルブレードのチップ、ゼットソーハードインパルス@現実 [思考・状況] 1:橋を渡る参加者を排除する 2:エアーマンと一時協力。ハルヒは邪魔にならない程度に利用。 3:生きて、ケラモンとの連携で最速を目指す。ケラモンは生き残るための駒 4:ゲームに乗っていない単独の人間は殺し、武器を貰う。 5:ゲームに乗っている人間とはなるべく戦いたくない。 6:武器の調達。出来れば食料も 7:殺戮ゲームの最速クリア。 8:ケラモンが死体と支給品を持ち帰るのを待つ。 ※KASのことを、自分の二番煎じ、偽者だと思っています。 ※ケラモンの名前、増殖限界、進化することを知りました。 クリサリモンの名前を知りません。 ※増殖限界については、最大数が二倍になるのか一体増えるだけのなのかで迷っています。 ※ハルヒの持っている情報を一方的に知りました。 【クラモン(クリサリモン)C】 [状態]:現在1体 [装備]:なし [道具]:なし [思考・状況] 1:TAS、おなか大丈夫かな。 2:とにかく数で勝負……進化しちゃった。 3:TASを利用してうまく遊びたい 4:イタズラしたい ※クラモンBの全滅により、クラモンCとDに増殖限界が集中します。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ その光景を見て、こなたとレナは何が起こったのかまるで理解が出来ていない様子だった。 自分達は、橋の上にいた――橋の上で、TASと戦っていたはずだ。 だというのに、何故……どうして自分達は。 花畑の中心で、倒れこんでいるのか? 辺りを見回してみても、TASどころかキバや妹の姿も見えない。 そこにあるのはありとあらゆる花だけ。 南国に咲いているようなのから、誰でも名前を知ってるような身近なものまで――無国籍な花の数々があるだけだ。 ……花だけ? いや、違う――その花に埋もれるようにして、一匹の妖精が頭を抱えて震えている。 「ピッピ……?」 こなたがその妖精の名を呼ぶ。 しかし、妖精は答えない――ただその瞳から涙を流して、呟く。 ごめんなさい、ごめんなさい、と……許しを乞うようにひたすらに呟き続ける。 あの時……TAS目掛けて攻撃系のものが出ればいいと思い、ピッピはその指を振った。 そして、その瞬間ピッピは光に包まれて消え失せた。 いや、ピッピだけではない……近くにいたこなたやレナ達すらも巻き込んで、ピッピ達は消えた。 碌に戦えないキバ達だけを残して、"テレポート"をしてしまった。 本来ならば最後に立ち寄ったポケモンセンターへと移動させるその技は、この世界では自分が最初に立っていた場所に飛ばされるらしい。 辺りの風景にだって見覚えがある、ここはピッピがあの凶暴なミニスカートに襲われた場所だ。 だからこそ、わかる。 ここに移動したのは自分の責任だと、戦えないキバ達を置いて逃げ出してしまったのだと。 戦うと、勇気を持つと誓ったのに、結局逃げ出してしまったのだと。 震えるピッピを見て……こなたとレナは、すぐさま事の次第を理解した。 あの光に包まれた原因が、ピッピの技によるものだと。 あの橋からは大きく離れたこの場所に飛ばされたのはその技の効果だと。 だが、しかし、こうして震えるピッピをどうして叱る事が出来よう? そもそも、三人は仲間だ……種族も、生きてきた年代もまるで違うが、それでも仲間だ。 二人は示し合わせたように無言で頷くと、立ち上がる。 「行くよ、ピッピ!!」 その声に振り向いたピッピが見たものは、西の方角へと真っ直ぐに瞳を向ける二人の少女。 瞳には絶望の色はない、ピッピを疎ましく思う色も無い。 「まだ間に合うよ、急いで走れば……私とこなちゃんの足ならきっと間に合う!」 「それに、キバくんがそんなに簡単に負ける訳が無い! ほら、立ってピッピ……まだ諦めるには早いよ」 尚も震えるピッピを強引に腕の中に持ち、こなたとレナは走り出す。 確かに二人の足は速い。 しかし、それはあくまでも人間レベルでの速さだ。 その程度の速さでは――TASには届かないという事を、二人はまだ知らない。 こなたの腕の中、ピッピはまだ泣き腫らしていた。 自分が情けなかった、キバ達の心配をするよりも謝罪して許しを乞う事を優先した自分が。 すぐに立ち上がらず、ただ震えるだけだった自分が。 自分は本当に何かの役に立てているのか、本当に彼女達の仲間の資格があるのか。 何も出来ずに足を引っ張るだけの自分に、存在価値はあるのか? 空を見上げて満月に問いかけても、答えは何も返ってこなかった。 【D-4 花畑/二日目・深夜】 【泉こなた@らき☆すた】 [状態]:顔面強打、右腕打撲(これらの痛みはひきました)、強い決意、腹部強打 [装備]:くうき砲@ドラえもん、団長腕章@涼宮ハルヒの憂鬱、フタエノ極意書@ニコニコRPG [道具]:支給品一式*2(食料一食分・水一食分消費)、暗視ゴーグル@現実、デジヴァイス@デジモンアドベンチャー、コロネ(バタフリー)@キャタピーだけでクリアに挑戦(残り100%)、 テニスボール、初音ミク@現実、モモンの実*3@ポケットモンスター、オボンの実*3@ポケットモンスター、ポケモンフーズ一日分(二食分消費)@ポケットモンスター [思考・状況] 1. D-2の橋に戻り、キバ達に加勢する。 2.つかさを助けたい。 3.圭一、ティアナの思いを継いで、対主催思考の仲間を探す。 4.城まで行き、首輪を解体出来る者を探す。 5.バトルロワイアルから脱出する ※フタエノキワミを習得しました。攻撃力が二倍になり、急所に当たりやすくなります。 ※他アニメについての知識が徐々に戻りつつあります。 「ひぐらしのなく頃に」「魔法少女リリカルなのは」の他にも、何か思い出すかもしれません。 【ピッピ@ポケットモンスター(ピッピのゆびをふるのみで殿堂入りを目指す)】 [状態]:強い決意…だけど、自信喪失、腹部強打 [装備]:リーフシールド@ロックマン2(技マシン的な使い方でポケモンは使える) [道具]:支給品一式(水一食分消費)、ほんやくコンニャク(1/4)(半分で八時間)@ドラえもん、 テレパしい@ドラえもん(残り3粒、五寸釘@現実、モモンの実@ポケットモンスター、 オボンの実@ポケットモンスター、ポケモンフーズ一日分(二食分消費)@ポケットモンスター [思考・状況] 1.少数派による運命の打開 2.D-2の橋に戻り、キバ達に加勢する。 3.城まで行き、首輪を解体出来る者を探す。 4.ティアナのような犠牲は二度と出さない。 5.あの怪しいポケモンとトレーナーを倒し脱出 ※首輪は頭の巻き髪についてます ※ピッピは、はたく、うたう、おうふくビンタを使えることを思い出しました。ただし、まったく使ってこなかったため、かなり信用に欠けます。 【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】 [状態]:悲しみ、右手に切り傷、右腕銃傷、腹部強打 [装備]:リアルメガバスター(240/300)@デッドライジング、サイレンサー付き拳銃(1/6)@サイレンサーを付けた時とry、鉈@ひぐらしのなく頃に [道具]:支給品一式*2(食料一食分・水一食分消費)、雛見沢症候群治療セット1日分(C-120、注射器、注射針)@ひぐらしのなく頃に、日本酒(残り半分) テニスボール、オミトロン@現実? モモンの実@ポケットモンスター、鉄パイプ、本『弾幕講座』、アイテム2号のチップ@ロックマン2 [思考・状況] 1.少数派による運命の打開 2.D-2の橋に戻り、キバ達に加勢する。 3.城まで行き、首輪を解体出来る者を探す。 4.圭一、ティアナの思いを継いで、対主催思考の仲間を探す。 5.富竹を発見できたら、薬を打ってあげたい。 6.ハルヒはしばらく泳がしておき、計略を為ったと見せかけておく。 6.罪滅しをする ※八意永琳が何か知っているのだと思っています。 ※時期は大体罪滅し編後半、学校占領直前です。 ※雛見沢症候群は完治しました。 ※身体能力が向上しています。それによってレナパンが使えるようになりました。 ※158話で感じた違和感の正体が、ハルヒに自分達の情報を教えたと推理しました。 また、ハルヒ達の計画を大まかながら把握しています。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 傷ついた三人は、光に包まれた後草原に辿り着いていた。 しかし、その草原は先ほどまでいた場所とは違う……目の前に聳え立つ塔が、何よりの証拠。 「よ、かった……逃げれた、みたいねぇ」 安堵の溜息を吐きながら、水銀燈は見上げる。 そこには、何が起こったのか今ひとつ理解をしていないような表情の媒介。 その横を見れば、再び涙を瞳に溜めている少女。 水銀燈は苦笑をしながらも、少女の瞳に溜まった水滴をその指で拭い去る。 「やぁねぇ、なんで泣くのよぉ……お馬鹿さぁん」 「だ、って、キバ、くっ……それ、に、すいぎ、と、ちゃ、まで……。 わ、たし、弱いから、いつも、守ら、れて、ティア、ちゃ、も……」 拭っても拭っても、少女の瞳には涙が溜まってゆく。 語る言葉は嗚咽交じりで聞き取りづらい、しかし、それでもその心は水銀燈へと伝わる。 水銀燈は、ゆっくりと頭を振って少女の言葉を否定する。 そして、赤子を諭すような優しい口調で諭した。 「弱い、からじゃ、無いわぁ……あな、た、は、強さ、を……持ってる」 少女の頬に触れながら、水銀燈は続ける。 「弱い、から、守られたんじゃ、無い……あな、た、は、愛されている、だけ……。 ティアナも、キバも、私ですら、あなたを、守らざるを得なかった……それだけ……。 それ、は、きっ、と、何よりも、大切な、事……だか、ら、恥じる事は、何も無い。 むしろ、誇るべき、あなたの強さ……」 視線の先を変え、媒介へと言葉の先を向ける。 「そ、それ、は、あな、たも、お、同じ……あな、た、は、いつの時か、言ってくれた……。 あ、愛されるのに、か、完全で、い、いる必要は、無い、と。 だか、ら、私は、え、選んだ……私の、意志で、あ、あなた達を、ま、守った……。 あ、あな、たは、愛される、べき、人だから……あ、愛されて、いる、人だから……」 「水銀燈…?」 ようやく、媒介は水銀燈の異常に気付いた。 言葉が途切れ途切れであるし、いつになく真剣な口調だという事に。 その様子を微笑を浮かべて見ながら、水銀燈は手に持っていたカードの一枚を見る。 「つ、つか、えるかしら、ねぇ……も、もう、二十四時間、経ってると、い、いんだけ、ど……」 そうやって、水銀燈が掲げたカードは聖なるエルフが描かれているもの。 震える口を無理やり動かして、その名を呼ぶ。 「魔法、カード……発動。 ホーリーエルフの、祝福。 対象は――」 そこまで言って、水銀燈は少しだけ考えた。 もしもこの状況を、ずっと憎んでいた彼女や他の姉妹達が見たならどう思うだろうか。 恐らく、目を疑うだろう……或いは、それもまた水銀燈の罠か何かと思うかもしれない。 思えば、自分は変わった。 よくも悪くも、この媒介を中心とした人物に影響されて。 でも、悪くない気分だった。 こういうのも悪くは無いと思いながら、その名を――自分の最期を看取って欲しいからこそ、呟く。 「対象は――永井、博之」 呟くと同時に、媒介の身体を暖かな光が包み込んだ。 それは身体の各所の傷を次々と癒してゆき……その顔さえも治す。 そう、その顔にある――瞳さえも。 「目を、開けて、みなさぁい……み、見えるように、なってる、かも」 「お、おお……」 言われるがまま、媒介は見えないはずの目を開ける。 見える、光が――夜なので光は少ないが、それでも何がそこにあるか把握が出来る。 その瞳は再び役目を果たせるようになったのだ。 感謝の意を述べようと、媒介は下を向き助けてくれたその者を見る――。 ――ジャンクがいた。 「……ぇ?」 「あら、その様子、だと……み、見えてる、みたい、ねぇ? よ、よかったわぁ……」 水銀燈がぎこちなく喋る、微笑みを浮かべながら喋っている。 横を向く、妹は泣いている、水銀燈を見て泣いている。 もう一度、水銀燈を見る。 水銀燈は心の底から、自分の目が見えるようになったのを喜んでいるようだった。 ――何故? 「水銀、燈?」 「なぁにぃ、情け、ない顔ぉ……も、っと、シャンと、しなさいよね……」 顔は悪漢の拳により皹が入っており、全身は傷だらけだった。 背中の翼は多量の羽根が抜け落ちており、非情に不恰好である。 そして――その下半身にあるべき足が一本足りない。 綺麗に、斬ってしまったかのように失われている。 「な、なんでど……なぁ! なんでど、水銀燈!!」 「怒鳴ら、ない、でよぉ……つ、唾、飛ぶじゃなぁい……」 その足――お父様から頂いた大切な身体の一部である足は、先ほどの戦いでサナギに掴まれていた部分。 あの時、水銀燈の脳裏に過ぎった打開案とは、その足を断つというものだった。 触手は斬れなかったが、所詮は人形である水銀燈のボディには骨というものがない。 故に、一太刀で断ち切る勇気さえあるのならば、あの状況は打開出来たのである。 だが、水銀燈はそれを迷った――お父様から貰った大切な身体を、自分から断つなど出来ない――。 そんな時だった、目の前の媒介の言葉が浮かんだのは。 ――完全じゃなくても、愛される奴は沢山いる。 ――完全な奴しか愛さないなんて、そんなものは父ではない。 「か、完全、じゃ、なく、ても……お、お父、様、には……あ、愛して、頂ける、もの……。 そ、そうよね、博之?」 「ッッッ!! あッ、たり前やがァ!!」 泣き叫ぶ博之を見ながら、水銀燈は少しずつだが何かがわかったような気がした。 いつの日か、例の憎い妹が言っていた甘い言葉。 人の思いが活力を与え、人の思いが人を動かすその本質を。 「い、いい、事、博之? さ、さっきも言ったけど、あ、あなた、は、弱くなんて、無い……。 だか、ら、悔いては、駄目……むしろ、誇りな、さい、その、誰にで、も、愛され、る、強さ……」 「っ! でもっ……それでも、俺はッ! 誰かを守れる強さが欲しいわぁ!!」 「……そ、う」 水銀燈がどれほど言葉を並べても、博之はやはり悔しがっていた。 目が見えないから、力が無いから、キバもティアナも、誰一人守れない。 大の大人が、守られるしか出来ない歯痒さを感じていた。 「な、なら、望みな、さい……ち、力を、え、得る事を……」 既に思うように動かなくなってきた頭を持ち上げて、水銀燈は呟き続ける。 もう残っている時間は少ない。 ならば、最後に何かをこの媒介に残さなくてはならない。 無力を嘆いている強い媒介に、戦う事の出来る力と自分の想いを与えなければならない。 水銀燈が博之の肩に手をかけると同時に、水銀燈の胸から二種の宝石が飛び出してきた。 それに思わず驚愕している博之に、水銀燈は呟く。 「ロ、ローザ、ミス、ティカ……わ、私の、もの、あ、あなた、に、受け取って、欲しい……。 にん、げんが、ち、力の、無い、人間、が、つ、使えるか……。 ど、どんな、副、作用、が、あるか、わか、らない……で、でも……ち、力を望む、なら……」 水銀燈の言葉に、博之は歯を食いしばり無言で頷いた。 それと同時に、ローザミスティカが博之の身体に触れ――情報が一気に押し寄せた。 水銀燈が生きてきた世界、生きてきた道のり、争い、記憶の全て。 そして、それと同じくして溢れてくる感情。 愛おしさ、友情、憎しみ、怒り、安らぎ、ありとあらゆる水銀燈の魂全て。 それらが媒介の脳裏を過ぎ、去ってゆく。 同時に、博之の身体に変化が起こる。 それは人間が服用した副作用なのだろうか……全身に激痛が走ったかと思うと、黒い帯状のマークが腕や胸を走る。 次第にその黒い帯は淵に光り輝く紫色を漂わせる。 一体どれほど経ったろうか、博之にとっては無限とも思える時を過ごしたが水銀燈達にとっては一瞬の出来事だったらしい。 だから、水銀燈も妹も――博之本人ですらその姿に驚きを隠せなかった。 まるでその姿はいつの日か自分がプレイした、主人公である魔人にそっくりのものだったのだから。 「……なんどこれえ!?」 「ふ、ふく、さよう、かしら、ねぇ……つ、伝わっ、た?」 涙はもう、流さなかった。 水銀燈の言葉に頷き、博之は胸に手を当てる。 水銀燈の全てはここに受け継いだ、力も心も記憶も……魂すらも。 「水銀燈の言うとる事が、頭ではのう心で理解出来たッ!!」 「そ、そう、なら、よか、った……」 もうすぐ、水銀燈は止まってしまう。 ローザミスティカを失ってしまった今、残されている時間は毛ほどもないだろう。 だからこそ、最後の言葉を博之に残そうと口を開く。 「お、覚えて、おき、なさい……わ、私は、水銀燈。 誇り高い、ローゼンメイデンの第一ドール――そして」 そう呟くなり、水銀燈は博之の頬へとその唇を近づけ――。 「幸せな……本当に幸せな、あなたのお人形」 その頬へ口付けを交わし――動かなくなった。 「~~ッ!!」 妹は、その様を見て更に声なくその涙を流し始めた。 媒介――いや、既に指輪を消失し媒介でなくなった彼……魔人博之は、涙を流さない。 博之の胸の中には、彼女の魂が眠っている。 その想いを受け止めた今、涙を流す理由は見当たらない。 「……水銀燈。 絶対に、お前を直したるから、それまで寝とれ」 彼女は人ではない、人の形をしたものだ。 神の指先を持つ父が作り出した彼女は、人でないからして生の受け方も人とは違う。 ――彼女は、父を思うが余りに突如独りでに動き出したというのだ。 そうして、ローザミスティカを得、アリスゲームに参加した。 その後、何度か戦いがあり――一度はその生を絶たれた時もあった。 だが、その時も彼女は生き返った。 その身体を父親に完全に修復してもらい、再び生を受けたのだ。 「俺、絶対生きて帰ってお前のおとうとかに頼み込んで、直してもらうから。 やから……また、会える」 博之は着ていた肌着を脱ぎ、いつか拾った右腕と水銀燈の胴体とを結びつける。 これで完全に上半身は裸になってしまったが、文句は言わない。 右腕部分はなんとか直せた水銀燈を己のデイパックに入れ、水銀燈のデイパックの整理を始める。 「……妹、いつまでも泣くな」 「っ、でもぉ……」 「でもやない……キバも死んだ、水銀燈も死んだ、もうおらん。 やけど……やからって、泣いとるだけやったらどうにもならん、やから立て」 尚も泣きながら、ゆっくりと立ち上がった少女に博之はカードの束と一つの刃物を渡す。 「……え?」 「持っとれ、水銀燈がお前につこうて欲しいゆうとぅ」 そう言う博之の顔には、どこか不思議と水銀燈の面影があり。 少女は、静かにその刃物とカードを受け取った。 ――その刃物は、自分が人を殺めてしまった時に使ったもの。 「それを使って、今度は人を殺すんやのうて……守れゆうとぅ。 自分を、仲間を、皆を……」 「水銀燈ちゃん……ッ!」 少女はその刃物――庭師の鋏を両手で抱きしめ、再び泣き出した。 しかし、今度の涙はただ親しい者の死を嘆くもののそれではない。 キバと水銀燈とティアナに救われた命をどう使うのか、それを悟った故に出てきた涙。 そして、それを必ず成し遂げると誓う涙。 博之は少女をそのまま泣かせておき――再び整理作業へと移った。 第三者が見れば、二人を冷たいと思うかもしれない。 しかし、彼らには――少なくとも、彼にはそれが理解出来たのだ。 彼らを守っていった者達の想いが、心で理解出来ているのだ。 だからこそ、博之は決して涙を見せず、ただ前を向き続けるのである。 その胸に熱い想いを――愛媛の打開を見せてやるという、意地を抱いて。 ローゼンメイデンの第一ドール――水銀燈の媒介であるという、誇りを抱いて。 悲しくないと言えば嘘になる。 しかし、だからこそ、前へ。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ――少女は、誰からも愛される兄を持っていた。 だからという訳ではないが、少女は愛される素質を持っていた。 ――魔人は、誰からも愛される兄を持っていた。 だからという訳ではないが、魔人は愛される資格を持っていた。 ならば――少女と魔人を守った三人は、その素質と資格に引かれたのみで守り抜いたのかと言えば、それは違う。 三人と、少女と魔人の間には常人には無いナニカがあった。 男女間の愛か、と聞かれれば違うだろう。 では、兄弟愛かとなると、それも違う。 家族愛でもないし、しかし、ただの仲間意識でも無い。 その間にあったものは言葉にするのは難しいが――しかし、あえて言葉にするなら。 ――人はそれを、絆と呼ぶだろう。 【水銀燈@ローゼンメイデン 死亡】 【残り31人】 【E-5 草原/二日目・深夜】 【永井博之@永井先生】 [状態]:深い悲しみとそれを超える脱出への誓い、魔人ピロ(紫)、上半身裸、萃香を少しだけ疑っています [装備]:薬草(3/99)@勇者の代わりにry 、包丁@フタエノキワミ アッー!(るろうに剣心 英語版) [道具]:支給品一式*3(食料三食分・水一食分消費)、座薬@東方project、ヲタチ(残りHP80%)@ポケットモンスター ゴム@思い出はおくせんまん、自動ぶんなぐりガス(残り1/5)@ドラえもん、ヴェルタースオリジナル*3@ヴェル☆オリ 真紅のローザミスティカ@ローゼンメイデン、ぬいぐるみ沢山、くんくん人形@ローゼンメイデン、ヤクルト(残り4本)@乳酸菌推進委員会 銀コイン@スーパーマリオワールド、薬草の軟膏(3/4)、右足が欠けたジャンク [思考・状況] 1.少数派による運命の打開 2.城まで行き、首輪を解体出来る者を探す。 3.水銀燈の分、詩音の姉へ償いをする。 4.水銀燈の右足を見つけたい 5.必ず生還し、水銀燈を直して再開する。 ※ローザミスティカの力を得て魔人覚醒をしましたが、魔人の能力を行使出来るか・水銀燈の力を行使出来るかは不明です。 ※ただの人間がローザミスティカの力を得た為に、副作用を受ける可能性があります。 ※水銀燈の見てきた全ての記憶・感情を得ました。 ※博之はハルヒの正体をレナから聞きましたが、あまりよく理解していません。 【キョンの妹@涼宮ハルヒの憂鬱&愛しの兄が振り向かない】 [状態]:深い悲しみとそれを超える脱出への誓い、阿部への怒り、頬に軽い切り傷、頭部に打撲&出欠 、軽い頭痛(痛みは和らぎました) [装備]:おたま@TOD、 カワサキのフライパン@星のカービィ [道具]:支給品一式(食料一食分・水一食分消費)、DMカード(オレイカルコスの結界 (次の早朝まで使用不可) 三幻神(ラーのみ使用可だが遊戯、海馬などのみ、他は次の早朝まで使用不可)、 ブラック・マジシャン・ガール(次の深夜まで使用不可)、ホーリーエルフの祝福(次の深夜まで使用不可)、青眼の白龍*2(次の午前まで使用不可)、強制脱出装置(次の深夜まで使用不可)、 死者蘇生(次の昼まで使用不可)、黒騎士の魔剣少女、セイバー(次の昼まで使用不可) コカローチ・ナイト(深夜に二度使用)、進化の繭、ゴキボール(次の深夜まで使用不可)@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ、ダンボール@メタルギアシリーズ ヴェルタースオリジナル@ヴェル☆オリ、携帯電話@現実、庭師の鋏@ローゼンメイデン [思考・状況] 1.少数派による運命の打開 2.城まで行き、首輪を解体出来る者を探す。 3.ティアナ・キバ・水銀燈の行動を無駄にしないためにも、生きる。 4.もう誰も殺さない、罪滅しをする。(阿部に関しては、どうするか分かりません) 5.古泉くんの間違いを正す。 ※萃香への憎しみは、萃香をこちら側に協力させるための嘘です。 sm170:あばよ、ダチ公(後編) 時系列順 sm171:せがれいじり sm170:あばよ、ダチ公(後編) 投下順 sm171:せがれいじり sm170:あばよ、ダチ公(後編) エアーマン sm183:リィンカーネーション(前編) sm170:あばよ、ダチ公(後編) 涼宮ハルヒ sm176:両手には飛び立つ希望 sm170:あばよ、ダチ公(後編) TASさん sm176:両手には飛び立つ希望 sm170:あばよ、ダチ公(後編) クラモンC sm176:両手には飛び立つ希望 sm170:あばよ、ダチ公(後編) 泉こなた sm176:両手には飛び立つ希望 sm170:あばよ、ダチ公(後編) ピッピ sm176:両手には飛び立つ希望 sm170:あばよ、ダチ公(後編) 竜宮レナ sm176:両手には飛び立つ希望 sm170:あばよ、ダチ公(後編) 水銀燈 死亡 sm170:あばよ、ダチ公(後編) キョンの妹 sm178:☆ニコロワ住民のネット小説☆クロミラテクニック隔離 sm170:あばよ、ダチ公(後編) 永井博之 sm178:☆ニコロワ住民のネット小説☆クロミラテクニック隔離
https://w.atwiki.jp/rozen-yuri/pages/428.html
それは遠い昔。まだ科学が発展してなく、天災は神々によって起こっているものと信じられていた時。 とてつもなく大きく、広い、海のような川があったとさ。 そこに近いある漁村で船の転覆事故が多発したために、ある少女が人身御供として出された。 少女は川に流され、ある島に流れ出た。 そこに住んでいたのは黒い着物を着崩した銀髪の美しい少女、名を水銀燈。 水銀燈は名前だけを思い出せないその少女を紅の着物を着ていたところから真紅と名付け二人で暮らしていくことになった。 そんな二人の楽しい生活が始まろうとしています。 ──にじりよる恋心 抜けるような青空と最初に形容したのは誰だったか。 正にその言葉がぴったりのある朝。真紅はゆっくりと目を開けた。 「朝御飯にするわよぉ」 川から流れてきたらしい魚を四匹抱えて来た水銀燈に起こされ、囲炉裏を囲む。 パチパチと火に焼かれた魚から食欲をくすぐる匂いが漂ってくる。 「はい、どーぞぉ」 「ありがとう」 塩で味つけられた串焼きの魚に一口かじりつく。 もうここに来て二週間。真紅はあることに気がついていた。 水銀燈はいつも真紅が起きる前に起きていて海から食べ物を持ってくるのである。 それは魚だったり海草だったり、時には野菜なんかも流れてくるというのだ。 別にそれだけならなんら疑問はないのだが、何故だか水銀燈は真紅を川に近づけようとはしない。 と言うより、そういう食べ物や他の必需品を持ってこようとする時、必ず水銀燈は一人で行くのだ。 「ねぇ、真紅。ほら、これ分かるぅ?」 「鞠……ね」 それは黄色地に赤や橙の牡丹の刺繍が入った綺麗な鞠だった。 「こんなものが流れてたんだけど、知ってるぅ?」 「水銀燈、知らないの?」 「えぇ」 なんか綺麗だから真紅が気に入るかなと思って。ニッと笑った水銀燈に真紅は正直、動揺が隠せなかった。 「これは、こうやってついて遊ぶのよ」 貸して。と言って、真紅は水銀燈から鞠を受け取った。 真紅は立ち上がると、唄を歌いながら鞠をテンテンとリズムよくついた。 かわむらのそばでみていたひゃくしょうが さかなをとってみたならば ぬぬっとしぶきをあげまして まっかなりゅうがおこりだす さかなをかえせ さかなをかえせ あわててさかなをかえしたら にっこりわらったせきりゅうが きんのひかりにつつまれて あっというまにきえたとさ 「へぇ、貸してぇ」 水銀燈は鞠を受けとると見よう見まねでテンテンと同じくつき始めた。 「歌、何だっけぇ?」 「もう一回歌うわよ?」 真紅がゆっくりとまた歌い出す。それに合わせて水銀燈が鞠をつく。 それにしても何故、水銀燈は鞠を知らなかったのだろうか。 水銀燈は自分の年齢は分からないと言った。しかし、見た目から言えば真紅よりも二つ三つ上に見えた。 「もう一回歌ってぇ」 「ええ! また?」 「お願いぃ!」 はぁ、と真紅はため息をついて再び歌い出した。 村にいた頃は、鞠つきで遊ぶのは幼子だけで、真紅はとうに遊ぶのをやめたと言うのに。 水銀燈はまだまだ楽しそうに鞠をテンテンとついている。 そうやって飽きるまで水銀燈に付き合っていると、既に日は暮れ、月が昇ろうとしていた。 「ねぇ、その唄どういう意味なのぉ?」 「意味って……知らないわ。私も姉と兄から教えてもらったもの」 「ふぅん」 水銀燈は真紅の膝の上で気持ち良さそうに髪をすいてもらっている。 何故か、彼女は一緒に暮らし始めてから、真紅の膝の上がお気に入りなのだ。 まぁ、これまで一人きりで暮らしてきたというのだからその寂しさの反動かもしれない。 「ねぇ、真紅。私ね、すっごい幸せよぉ」 笑顔で彼女を見上げた水銀燈は彼女の金糸をサラサラと撫でた。 「貴女がいて、とても嬉しいのぉ」 真紅の頬にペタリと触れた水銀燈の手はするすると唇まで滑る。 「大好きよぉ、真紅」 「すいぎ、……」 真紅の紡ごうとした名前は水銀燈の唇に寄って塞がれた。 「逃げないのぉ?」 確かに。普通ならば会って二週間足らずの同性の少女に。でも、何故か逃げる気にはならない。 「ふふ、真っ赤ぁ」 ぷに、と水銀燈の指がその名の通り真紅色に染まった頬を突いた。 「私も、大好き……よ」 口を開くとこんな言葉がスルッと出てしまった。 「一人だったのは、私も一緒」 ポツリポツリと真紅が言葉を紡ぐ。 心優しい姉も、力強い兄もいた。けれど、所詮はただの他人で。 村人からは蔑まれ、疎まれ、嫌われ、私は一生こうやって生きて、そして死ぬんだと思っていた。 「だけど、水銀燈。貴女に会えた……!」 「真紅ぅ……」 起き上がった水銀燈が真紅を優しく包み込んだ。 初めて本当の人の温もりを感じた真紅はぼろぼろと涙を溢しながら、水銀燈の胸元を掴んだ。 「辛かったのね、真紅。ねぇ、聞かせてくれなぁい? 真紅に何があったか」 ぐ、と唇を強く噛んだ真紅は水銀燈の胸に顔を埋めながらゆっくりと話し始めた。 自分には家族がいないこと。姉と兄に拾ってもらったこと。漁村に住んでいたこと。 そこで嫌われて蔑まれたこと。自分を嘲った人達が次々死んでいったこと。 そして、それは自分が悪いんだということ。 「私じゃないのに。私は、何も知らないのに……」 「大丈夫。大丈夫よぉ、真紅」 喚く真紅の頭を安心させるように、水銀燈は暖かい手で撫でた。 「ねぇ、真紅。こんな風に考えられなぁい?」 真紅は、神様に愛された子なのよぉ。 「は?」 「だからぁ、真紅をバカにした人達を見た神様が罰を与えたのぉ」 ニッと自信ありげに笑った水銀燈に思わず目を丸くしてしまった。 「それで人の命を奪う神様も神様だけどぉ、そんな村で暮らすより私とのこの暮らしの方がいいと思うでしょう?」 「まぁ、そうだけど……」 「そういうことよぉ!」 元気を出させるように背中を軽くポンと一つ叩くと、水銀燈は再び鞠を取り出した。 「ま、また!?」 「えー、だって楽しかったんだものぉ」 呆れながらもお願いされたら断れなくて、真紅は再び歌い始めた。 「ねぇ、水銀燈」 「ん?」 「私、少しは村の人達を恨んでもいいのかしら」 「当たり前じゃなぁい。むしろ、恨んでない方が変なくらいよぉ」 「そう、……そうよね」 かわむらのそばでみていたひゃくしょうが さかなをとってみたならば ぬぬっとしぶきをあげまして まっかなりゅうがおこりだす さかなをかえせ さかなをかえせ あわててさかなをかえしたら にっこりわらったせきりゅうが きんのひかりにつつまれて あっというまにきえたとさ 唄に合わせた水銀燈の鞠の音が、外を包む闇に消えていった。 続く 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/ifrozenteacherss/pages/595.html
水銀燈「悔しかったらディアブロより高い車でも買ってみなさい!ちなみにこれは3000万したわぁwww」 薔薇水晶たちを高笑いしながら罵倒する水銀燈。 雪華綺晶「さて、私達も帰ろう?今日は車で来てるし・・・」 薔薇水晶「・・・・・・」 水銀燈「あらぁ、あなた達も自動車通勤だったのぉ?まあ、このディアブロより高い車なんてありえないけどぉ・・・クスクス・・・」 何もいえない薔薇水晶を引きずって駐車場に連れて行いった。 その口は若干の笑みでつりあがっていた。 10分後・・・ 水銀燈「な、なにあれ・・・」 駐車場から出てきた幅3.75m、全長9.67mの巨体を目にして固まる水銀燈。 出てきたのは世界3大最強戦車の一つ、ドイツのMBT「レオパルド2」。 雪華綺晶「こっちの車は5億円だよ、水銀燈。」 水銀燈「ま、負けた・・・」 本体の操縦席から上半身を出してあっかんべーのポーズを取る雪華綺晶。 ナンバープレートが付いたその戦車は自宅の方向へ走り去っていった。 その後、水銀燈は薔薇水晶に自動車を自慢する事はなくなったという。
https://w.atwiki.jp/rozen-yuri/pages/27.html
「……あら、雨だわぁ…」 ポツポツと、空から水の雫が落ちてきた。 あっという間に辺り一面を濡らし、少女も気が付けばずぶ濡れになっていた。 長い銀髪や着ていた服が、水を吸って重くなる。 何故か、少女はそれほど気にならず、そのまま暫くぼんやりとしていた。 「水銀燈?何してるの?」 繰り返し聞こえてくる雨音以外に、一つの声がした。 水銀燈が振り替えると、青い傘を持った少女がいた。 「ずぶ濡れじゃないか…。風邪ひいちゃうよ?」 持っていた傘を水銀燈に傾け、心配そうに見つめる。 「…別に構わないわぁ」 「僕が嫌だよ」 少々怒り気味に、水銀燈の言葉を一刀両断する。 そんな少女が何故かおかしくて、水銀燈は小さく笑う。 「な、何笑ってるの?」 「別にぃ」 本当は大笑いしたい衝動を抑えて、水銀燈はいつものクールな表情に戻った。 「で、何してるのぉ?」 「それはこっちの台詞だよ…。雨降ってるのに傘も差さないで何してたの?」 「んー…そうねぇ……。何だか此所にいたら、蒼星石に会える様な気がしたのよぉ」 「……へ?」 水銀燈らしからぬ、何やらロマンチックな言葉に、蒼星石は一瞬固まった。 「ふふ、私らしく無いわねぇ。でも、何だかそんな気がしたわぁ」 「……はぁ…」 蒼星石はただただ、首を傾げるだけだった。 「…ん、なんか寒いわぁ……くしゅんっ」 「風邪ひいちゃうと大変だ……僕の家、すぐそこだから来る?」 「…そうねぇ、お言葉に甘えるわぁ」 愛しい人の家に上がり込む理由を手に入れた水銀燈は、どのようにして愛しい人を食べるか、作戦を考えるのであった。 蒼「ブルマをはいてくれないか水銀燈」 銀「や」 蒼「ヤクルトをつけようじゃないか」 銀「…やぁよぅ」 蒼「ヤクルトプレイしかしない」 銀「…ごくり…」 銀「…ねえ、蒼星石…」 蒼「どうしたの? 神妙な顔して」 銀「…今更こんな事聞くのも変だけど、昔の事、恨んでない? ローザミスティカを奪った事…」 蒼「…またその話かい?」 銀「…私は時々、怖くなるのよ。本当は私のこと恨んでるんじゃないかって…」 蒼「何度も言ってきたじゃないか。もうその事は忘れたよって…」 銀「…分かってるわぁ。…ただ、時々発作みたいに…」 蒼「水銀燈…」 銀「あんな酷い事をした私に、蒼星石が恋人でいてくれる…その事が幻みたいに思えて…」 蒼星石は俯きながら話す水銀燈の頬を持ち、こちらを向かせるとそのまま唇と唇を重ね合わせた。 いきなりの事で呆気に取られる水銀燈。 更にそのまま蒼星石は舌で口をこじ開けて舌を絡め取った。 銀「うんっ、ん…」 しばらくして蒼星石は口を離した。二人の口を銀色のアーチが結ぶ。 蒼「…水銀燈、愛してる。何よりも」 銀「蒼星石…」 蒼「正直言うと、ローザミスティカを奪われたときも少し嬉しかったんだ」 銀「えっ?」 蒼「これでずっと水銀燈といられる、水銀燈と一つになれる…そう思えたんだ」 銀「そうなの…?」 蒼「それぐらい僕は君を愛してる。だから、何も心配しないで」 銀「蒼星石…」 蒼「…僕の言う事、信用できない?」 銀「そんなわけ無いわぁ。…私も愛してるから」 蒼「…もう、発作は治まった?」 銀「ええ。おかげさまで」 蒼「良かった…今日は一緒に寝よう」 銀「うん…」 蒼「水銀燈の髪って綺麗だね」 銀「そう? でも私も気に入ってるからそう言ってくれると嬉しいわぁ」 蒼「手触りも凄く良いしくせっ毛が全然無くて、色も素敵だし…」 感嘆したように溜息を吐き、水銀燈の髪を手ですいていく蒼星石。 それに気持ち良さそうにして目を細める水銀燈。 蒼「…ちょっと、羨ましいかな」 銀「あら? 私はあなたの髪も素敵だと思うわぁ」 蒼「お父さまが決めてくれた髪形だからね。僕も気に入ってるよ。ただ僕も長髪になってみたい、って思うことはあるよ」 銀「でも髪が長いと結構手入れとか大変よぉ」 蒼「うん、それは分かってるつもりだけどね…」 はは、と少し寂しそうに笑う蒼星石。 そんな蒼星石の髪を、今度は水銀燈が顔を近付けて梳き始める。 銀「私は蒼星石の髪が好きよぉ」 蒼「僕の髪が?」 銀「ええ。撫でているとすごく安心するわぁ。それにいい匂いだし…」 蒼「水銀燈だって同じシャンプー使ってるじゃないか」 銀「でも、私は蒼星石の髪の匂いが好きよぉ。優しい感じがして…」 蒼「そうかな?」 銀「そうよぉ。私は蒼星石の髪が好きだし、あなたは私の髪が好きなんでしょう?」 蒼「うん…」 銀「お互い好きなら、良いんじゃない? あなたはこの髪でいいのよ」 そう言って蒼星石の髪に自分の頬を乗せる水銀燈。 銀「…こうしてるとやっぱり落ち着くわぁ」 蒼「水銀燈…」 銀「大好きよぉ、蒼星石」 蒼「僕だって負けないくらい好きだよ。水銀燈の全部が」 お互いの良い匂いに包まれて、二人はそのままゆっくりと時を過ごした。 蒼「ねぇ、水銀燈…」 蒼「他の女の子と話さないで、他の女の子と電話しないで、他の女の子とメールしないで、他の女の子の相談に乗らないで、他の女の子に優しくしないで、他の女の子の胸で泣かないで、他の女の子に隣を許さないで」 蒼「僕以外の、女の子は、受け付けないで?」 蒼「水銀燈は、僕だけを見てればいいんだもんね!水銀燈の彼女は…僕なんだもんね!!!」 蒼「あははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!」 銀「乳酸菌摂ってるぅ?」 蒼「そう言えば最近取ってないなぁ」 銀「ダメよぉ、ちゃんと摂らなきゃ」 蒼「水銀燈が口移ししてくれたら毎日飲むけどね」 銀「な、何言ってるのよぉおばかさぁん///」 めぐの病室 銀「ちょ、ちょっと蒼星石…!」 蒼「なに?」 銀「や、止めてぇ…こんな所で…」 蒼「やだ。僕が我慢できない」 銀「蒼星石ぃ、冗談も程ほどにしないと…!」 蒼「あんまり声出すとめぐさん起きちゃうよ?」 銀「……!」 め「すぅ…」 蒼「寝てるみたいだね」 銀「んぅっ…!」 いきなりディープキスをされ、水銀燈が拒む間も無く口の中に下が入り込んでくる。 蒼「んむ…ちゅっ…」 銀「んっ、ぷぁ…」 蒼「はぁ…なんだかんだ言ってノリノリじゃないの?」 銀「そ、そんなことぉ…!」 蒼「…でも、こっちは随分と濡れてるみたいだよ?」 銀「あぁっ…!!」 蒼「めぐさんにばれるかも、って思って興奮しちゃった?」 銀「や、止め…」 蒼「でもこっちはそんなこと言ってないみたいだよ?」 銀「やぁ…! あぁ…!」 蒼「さてと、そろそろ本格的に頂こうかな」 銀「いやあぁ……!!」 次の日の朝。 め「水銀燈、昨日夢見ちゃった」 銀「どんな夢?」 め「あなたが泣いてる夢見たの。でもどこか嬉しそうで…変な夢よね」 銀「な、なななな…」
https://w.atwiki.jp/ifrozenteacherss/pages/463.html
私立有栖学園の校長・・・ローゼン、彼は変人でもあり奇人でもある、しかし彼の本当のやさしさを知る者は少ない 一方私立有栖学園の教師の一人水銀燈、彼女も悪く言えば変人でも奇人でもあるが、根は優しい先生である ○月×日 雨 水銀燈「なによぉ~・・・そんなに怒らなくてもいいじゃなぁ~い」 水銀燈の声が職員室に響き渡る・・・しかし 真紅「許すものですか!くんくん人形を返しなさい!」 翠星石「おめぇ~のした事は重罪ですぅ~、いい加減謝りやがれですぅ!」 蒼星石「悪いけど、今回は許しがたいな、僕の帽子弁償だけでは済まないよ?」 金糸雀「よくもカナのバイオリンを壊してくれたかしらー?」 雛苺「うにゅ~を返すのー!」 雪華綺晶「戦車を破壊して許されると思っているのか!」 この場に居る教師全員が敵であった・・・それもいつもなら仲介に出てくる蒼星石や揉み消してくれる雛苺に金糸雀まで そう、水銀燈は今完全に孤立していた・・・ 水銀燈「な・・なによぉ、皆して虐めなくてもいいじゃなぁ~い・・・」 若干反省したのかいつもの甘ったるい口調ではなく少々の怯えが混ざる しかし他の教師の猛攻は続き・・・・ 真紅「いい加減にしてよね?この脳みそジャンク!」 翠星石「食材を無駄にするなんて人間として風上にも置けないですぅ!」 蒼星石「悪いけど、これから友達関係見直させてもらうよ」 金糸雀「もう口利いてあげないのかしらー!」 雛苺「べ~~~~~っだぁ!」 雪華綺晶「ナチスを侮辱した事、悔い続けるがいい!」 ・・・・・ガタッ!全員が言い続けてると思いっきり席を立つ水銀燈 水銀燈「・・・・・・・・」 そして無言のまま職員室を出て階段を上がっていく、その目には確かに大粒の涙があった まだ階段を上がる、これより先は屋上である・・・・その時 薔薇水晶「あ、水銀燈先生おはようございます」 奥から歩いてきた薔薇水晶が挨拶をする 薔薇水晶「あのー、ここから先は屋上ですよ?」 いつもの元気がない水銀燈を心配する薔薇水晶、しかし水銀燈は無言のまま階段を上がる 薔薇水晶はそれ以上とめる事もなく頭に?を浮かべながら職員室へと向かった そして職員室に入ったが、そこはいつもの雰囲気ではなかった・・・そうなにかジメっとした感じが漂う陰気な空間であった 薔薇水晶「・・・・・・・・・ぉ・・・おはようございます・・・」 薔薇水晶がおどおどして入る、しかし挨拶は返ってこない・・・ いつもなら水銀燈の甘ったるい挨拶に始まって色々な挨拶が返ってくるがそれもない・・・そんな時 ガラッ!!!いましがた閉めたばかりのドアが開いた ローゼン「グッッッッ・・・・・・モォォォォォォニィィィィン!」 空気等まったく読まない奴が入ってきた・・・・ ローゼン「ん・・・ん・・・・?・・・・んんんんんん!?、どうしたんだい皆お通夜みたいな顔してぇ!ははぁん、さては僕が来たから照れてる?」 そんな事を一人浮かれて喋るローゼン・・・・そこで薔薇水晶が無言でローゼンの腕を掴み廊下へと引きずり出す そして廊下に出た二人・・・そんな中先に口をあけたのはローゼンだった ローゼン「水銀燈先生が居ませんでしたね、しかも皆さん暗い顔持ち・・・喧嘩でもしましたか?」 そこにはいつものローゼンとは打って変わって凛々しい男性のローゼンがあった そんなローゼンに一瞬見惚れた薔薇水晶だったが・・・ 薔薇水晶「・・・・水銀燈先生泣いてたの・・・なんでかは判らない・・・雨なのに屋上に行った・・・」 いつもよりはっきりとローゼンに話す薔薇水晶、そしてそれを聞き小声で「ありがとう、後は任せておきなさい」と言い階段を上がるローゼン 薔薇水晶は事態の内容すらわからなかったが、これで大丈夫だと確信した 一方屋上では水銀燈が雨の中屋上から校庭をただ一人見ていた 水銀燈(なんでこんなことになっちゃったんだろ・・・少しだけイタズラしただけなのに・・・) いつもの水銀燈ならこんなことは欠片も思わないだろうがこの時は違った・・・ ちょっと構って欲しい、ちょっと付き合って欲しい、ちょっと一緒に居て欲しい、これの延長線でイタズラの度が過ぎてしまっただけなのだが・・・ 水銀燈「・・・・皆に嫌われてるならいっそ・・・」 そう呟く水銀燈・・・・しかし ローゼン「いっそなんだい?そこから飛んで夢の彼方にでも行くつもりか~い」 等と緊張感の欠片も無い声が水銀燈に届き、その声の主に振り返る水銀燈 水銀燈「な・・・なによ!あんたなんか呼んでないんだからとっとと消えなさい!」 それに対し怒りをあらわにする水銀燈これに対して穏やかに答えるローゼン ローゼン「そうもいかないなー、だって僕校長だしー、それにお通夜みたいな職員室は耐えられないしね」 と、あっさりと切り返す 水銀燈「馬鹿いわないで頂戴、大体貴方みたいに何の考えも持たない人間が・・・」 そこまで言ってしまったと思った・・・ローゼンは自分を救いに来たのにそれをまた自分で手放したのだと自分を責める ローゼン「だねー、ほぉーんと考えもってないよー」 しかしそこには怒りや侮蔑の回答ではなく、いつものローゼンの回答があり・・・・次の瞬間彼の顔を見て世界が止まる ローゼン「でもね、僕は僕のやり方でだけど今の有栖学園が崩れないようにしたいんだ、もちろんそこには水銀燈先生の存在もあるよ」 口調はあくまでも穏やか・・・いやいつもみたく冗談等の意味が含まれない穏やかな声・・・・ ローゼン「君が何をしたか知らないけど、一度躓いたぐらいで飛び降りようとか考えるのは穏やかじゃないなぁ・・・」 変わらぬ口調、しかし最後の飛び降りようとの所には怒気が確かに含まれていた・・・ ローゼン「じゃぁ、僕はラプラスから逃げないといけないから戻るね♪」 そして戻るローゼン、そこにはいつもの・・・本当にいつものローゼンが居た 残った水銀燈は一人考えた・・・が、もう答えは決まっていた・・・ 泣いていたその顔は今ではすっきりとした顔に戻っている・・・ 水銀燈「ほぉ~んとに、私が居ないだけでお通夜とか・・・みんなおばかさぁ~ん・・・」 まだ涙声だが汚れの無い声で職員室に戻る水銀燈の姿があった・・・ いつの間にか雨は止んでいた fin
https://w.atwiki.jp/sauber_rozen/pages/22.html
柿崎めぐ -かきざきめぐ/Megu kakizaki 水銀燈のミーディアム 登場作品:Rozen Maiden/ローゼンメイデン(漫画)/ ローゼンメイデン トロイメント/ローゼンメイデン オーベルテューレ .声 優 :河原木志穂/登場せず .特 技 : .趣 味 : .ファン名: .あだ名: 水銀燈の契約者の少女。 原作では水銀燈の螺子を巻いたが、水銀燈がなかなか契約を結ぼうとせず、Phase37で遂に正式に契約。 水銀燈が契約を結んだ目的はめぐを雪華綺晶から守るためのようである。 アニメでは第2期から登場。水銀燈の螺子を巻いた訳ではないが、薔薇水晶に導かれるまま一人でに目覚めた水銀燈に対し、一方的に契約を結んだ。 有栖川大学病院に心臓の病で入院しており、完治するには移植手術が必要だが、幼少時からの度重なる短命宣言で生きる気力を失っている。 普段はベッドで横になっているが、外を歩く程度はできる。 本人は病弱な自分を「壊れた子(ジャンク)」と言っている。 自分の前に現れた水銀燈を「天使さん」と呼び、彼女が自分の命を使い切ることを望んでいる。 かつて発作を起こした時に、祖母がいつも自分のために歌ってくれた『からたちの花』を水銀燈のためにいつも歌っている(アニメでは「瞬」)。
https://w.atwiki.jp/animerowa/pages/559.html
プリズムライト(後編) ◆B0yhIEaBOI うっすらと目を開けると、外の光がカーテンの隙間から見えた。もう朝みたいだ。 昨晩はほとんど眠れなかった。いつもなら何処でもすぐに眠れていたのに、どうしても眠ることができなかった。 そして、眠れなかったのは僕だけではなかったようだ。 今、この病室には、僕――野比のび太の他に、3人の人がいる。 水銀燈と、劉鳳さんと、セラスさん。 劉鳳さんとセラスさんが病室に戻って来てから、僕らはほとんど何も喋らない。 なんだか、空気が張り詰めて緊張しているのが僕にも分かる。 お互いがお互いを見張っていると言うか…… これなら、ドラえもんと一緒に見張りに行けば良かったかもしれない。 どうして、みんな仲良くできないんだろう。 「もう朝みたいねぇ。で、貴方は何時まで私のこと睨んでるつもりなのかしら?」 張り詰めた空気の中で、水銀燈が面倒臭そうにそう呟いた。 「……」 それに対して、壁際で座っているセラスさんは黙ったままだ。 セラスさんは、昨晩部屋に戻ってから今までの間、ずうっと水銀燈を睨み続けている。 それはまるで、『少しでもおかしな真似をしたらただじゃおかない!』って言ってるみたいだった。 劉鳳さんは傷が痛むのか、ベッドでずっと横になっていた。 目を閉じて眠っているみたいだけど……この状況で寝られるなんて感心する。 「全くもう、そんな露骨に邪険にしなくてもいいじゃないのぉ。私が貴方達になにかしたぁ?」 返事をしないセラスさんに、水銀燈はゆっくりと喋りだす。 こういうのを“挑発的”って言うのだろうか。 セラスさんの額がピクピクと引きつる。 「何か、ですって? ミオンに――あたしらの仲間に攻撃しといてよく言うよ! あれでもしあの子に何かあったら、ただじゃおかなかった!」 「ふぅん、貴方はあの娘に心底騙されてるのねぇ、お人好しさんなんだから。よくそんなので今まで死ななかったものだわ」 「なッ、まだ言うかッ、この嘘吐きの呪い人形!!」 顔を真っ赤にして怒っているセラスさんだったけれど、水銀燈は全く怯まない。 それどころか、むしろ嬉しそうにすら見えるのは僕の気のせいなんだろうか? 「酷い言われようねぇ。でも、貴方だけには言われたくないわね『嘘吐きの化け物さん』。」 「な、なにをっ……!」 「あら、やっぱり? なんだか普通の人っぽくなかったからカマかけてみたんだけど、図星だったみたいねぇ。 それを黙って私たちに近づくなんて……油断させておいてガブリ、ってつもりだったわけぇ? ああ、それで一晩中私のこと見てたんだぁ。ああ怖い怖い」 「ち、違うっ! 私はアンタが悪さしないようにって!」 「悪さって何よ? 私は貴方とちがって嘘なんかついていないわよ? 私はただ、自分の身を守るために、“しかたなく”応戦しているだけ。 あなたがあのミオンって娘を信じるのは勝手だけど……私が嘘をついているっていう証拠はあるの?」 「それは、その……無いけど……」 「あきれた! 証拠も無いのに人を嘘吐き呼ばわりしてたのぉ? これはこれは、とんだ名探偵さんねぇ」 「あ、アンタとミオンだったら、どう考えてもミオンの方が信じられるんだよ!」 「はいはい。おばかさんは煩いから、もう黙っていてくれるぅ?」 セラスさんはその後も何か叫んでいたけれど、水銀燈はそれらをまるっきり相手にしなかった。 もう、セラスさんはどうでも良い、という風だった。 セラスさんもただの悪口を言ってるだけみたいだったし…… 「全く、騙されるのは勝手だけど、人に迷惑をかけないで欲しいわねぇ。 それより、私はそっちの男の人に用があるんだけど。貴方、ちょっと起こしてくれない?」 「だ、駄目よ! 劉鳳は疲れてるんだからまだ寝かせておかないと……」 そこまで言ったセラスさんの口が、男の人の手で塞がれる。 「いや、もう十分休ませて貰った。奴の相手は俺がする」 目を覚ました劉鳳さんが、体を起こした。 「で、何を俺に聞きたいと言うんだ?」 劉鳳さんが水銀燈を見る。 いや、やっぱり睨みつけている。セラスさんと同じだ。 「……まったく、どうして貴方達はこう刺々しいのかしらねえ?」 「愚問だな。俺達は貴様を敵と認識している。貴様に隙を見せる訳には行かない」 劉鳳さんは、そのとき確かに、はっきりと言った。 水銀燈は敵だ、と。 理由も何も告げずに、ただその結論だけを。 「あらあら野蛮ねぇ。一方的に『お前は俺の敵だ』なんて。私は何にも悪いことなんかしてないのに」 「フン、貴様の言葉など信じるに足りん。貴様は俺達の仲間を攻撃した。それだけで十分だ!」 劉鳳さんはそう言いながら、ゆっくりとベッドから起き上がる。 「ちょ、ちょっと劉鳳、今ここで戦う気なの? のび太君がいるのに……」 そう言ってセラスさんは劉鳳さんをたしなめるが、 一方でセラスさん自身もいつでも戦えるように身構えている。 この人達は、始めるつもりなのかもしれない。 新しい殺し合いを…… でも、対する水銀燈は相変わらず不敵に笑っている。 「全く、こっちは戦う意思が無いって言うのに。そんな私に襲い掛かるんだ?」 水銀燈は微塵も動じずに話続けるが、 もう劉鳳さんは聞いていない。 「俺は、俺の信じる『正義』を貫くだけだ! もう語ることは無いのか? ならば行くぞ! 絶――」 「そうやって、真紅も殺したの?」 「何ッ!?」 水銀燈が呟いた一言で、劉鳳さんが止まった。 劉鳳さんが真紅を殺した……? あれ……? 「貴方が真紅の遺体から何か――ローザミスティカを盗ったっていうのは本当だったのね」 「貴様……貴様も真紅を知っているのか?」 「真紅はね……私の妹よ。私が聞きたいって言ったのは、真紅のことなのよ」 「……!」 水銀燈が喋るにつれて、劉鳳さんの勢いが目に見えて弱くなっていくようだった。なんだか顔も青い。 よっぽど劉鳳さんが話したくないことなんだろうな、と思った。 そう思いながらも、僕は記憶を掘り返す。 確か……真紅って、ドラえもん達と一緒にいたんだよね? そして、女の人と戦って、死んだんだ……ってドラえもん達は言ってたはずだ。 劉鳳さんが殺したっていうのは……違うんじゃないのかな?? でも、それなら劉鳳さんもちゃんと『違う』って言えばいいのに…… そう思う僕に答えるように、劉鳳さんが話し出した。 「真紅には……すまないことをした。俺が不甲斐無いばかりに……確かに、俺が殺したのも同然なのかもしれない」 でも、その言葉を聞いたとたんに、水銀燈の目が変わる。 今度は水銀燈が劉鳳さんを睨みつけて、叫んだ。 「その“すまないこと”って言うのは、真紅を見殺しにしたってこと? 遺体はほっといてローザミスティカだけ盗ったってこと? それとも……真紅を殺して、ローザミスティカを奪ったことなの? 答えなさい!」 それまでとはうって変わって、水銀燈が劉鳳さんを責め立てる。 劉鳳さんは……なんだか歯切れが悪い。何か、やましいことでもあるのだろうか? 「ち、違う! 俺はただ、真紅を保護しようとしただけだ!」 「そして、勢い余って殺しちゃったって言うの!?」 「違う! 保護するために探していたが、見つけたときには真紅はもう既に死んでいたんだ!」 「その割にはちゃっかりローザミスティカを盗んでいったのよね? 真紅のことは置き去りにして」 「あ、あの時は急いでいたから、仕方なく……!」 「下手な言い訳ねぇ。私の言うことは信じない癖に、そんな世迷いごとは信じろっていうの? 貴方達、人の悪口言いふらすんなら、きちんと『証拠』を見せなさいよ。貴方達が嘘吐きじゃないのならね!」 「証拠……ああ、そのとき同行していた人物なら……いや、しかし……」 「なによ、まどろっこしい。嘘ならもっと上手くつきなさいな?」 嘘……じゃない。きっと、これは誤解なんだ。僕はそう信じたい。 劉鳳さんも水銀燈も、きっと勘違いをしているだけなんだ。 水銀燈はきっと、真紅が死んだことが悲しくて、こんなに怒ってるんだ。 劉鳳さんも、真紅を守れなくて悲しいだけなんだ。 劉鳳さん……ジャイアンとも一緒だったんだし、きっと劉鳳さんが人殺しだなんて、何かの間違いに決まってる。 誰かが嘘を言って、誰かが誰かを騙そうとして……そんなの、もう嫌だ。 きっと、ほんのわずかな行き違いなんだ。大切なパズルの1ピースが抜けているだけなんだ。 きっと、その一枚がきちんとはまれば、みんな仲良く協力できるはずなんだ……! 「水銀燈、ちょっと待って……」 でも、そう言いかけた僕の言葉は劉鳳さんの一言に掻き消された。 「嘘ではない! 俺は、確かに峰不二子と一緒だった……!」 そう言った劉鳳さんは、 『しまった』という顔をした。 僕は、それをはっきりと見ていた。 「不二子? ……それって……」 「……そうだ。太一少年を殺したという女だ」 その言葉を聞いた瞬間に、僕の劉鳳さんを庇う言葉は、のどの奥へと飲み込まれていった。 ……え? ……太一くんを殺した女の人……? その人と、劉鳳さんは、一緒にいた……? それじゃあ、劉鳳さんとその女の人は……もしかして…… ナカマナンジャナイノ? バラバラだったパズルのピースが合わさると、それまでとは全く違った答えが浮かび上がる。まさにそんな感覚だった。 そうだ。太一君を殺した女の人……その人が、真紅を殺した人だとしたら? それなら、ドラえもん達の言ったこと、水銀燈の言うことも間違っていない。 それに、それでなくても劉鳳さんの周りには危険な人が集まっている。 人殺しの女の人、化け物? のセラスさん。水銀燈を襲ったミオンって人と、その仲間。ハルヒさんもそうかもしれない。 じゃあ、ジャイアンは? ジャイアンもまさか!? ……そうかもしれない。ジャイアンはいつも僕を苛めていたし、なんでも力ずくだったし…… それとも、ジャイアンもこの人達に騙されていたのかもしれない。 そう、ついさっきまでの僕みたいに。 「あきれた! 自分の無実を証明してくれるのが人殺しだけですって? そんな言い訳が本当に通じるとでも思っているの!?」 そうしてみると。なんだか水銀燈の言うことがとてもまっとうに聞こえる。 でも、劉鳳さんは劉鳳さんで開き直っている。 「信じてくれとしか、俺には言えない。水銀燈、お前の妹を護れなかったのは俺の責任だ。すまなかった」 相変わらず横柄なまま、劉鳳さんが水銀燈に頭を下げた。 白々しい。 当然、水銀燈はそんな程度では収まらない。 「それにねぇ、私が聞きたいのはそんな薄っぺらい謝罪じゃなくて、真紅がどうして死んだか、なのよぉ? あと、私の他の妹について何か知っていたら教えて欲しいわねぇ。みんな、もう死んじゃったけど。 案外、アンタが皆を殺して回ってるんじゃないのぉ?」 「あんた、黙って聞いてりゃあ!」 セラスさんがいきり立つ。 ……セラスさんも、劉鳳さんの仲間……。 ということはやっぱり、水銀燈が言ってることは、本当なの……? でも、水銀燈はセラスさんを無視し続けたまま話し出す。 「劉鳳、って言ったっけ? あなた、口では『正義』とか『仲間』とか綺麗な言葉を並べてるけど…… そういうのって、口で言うだけじゃなくて行動で示すものなんじゃないのぉ? だのに、貴方はさっきから『お前は嘘吐きだ』『お前は敵だ!』とか勝手に決め付けて襲ってこようとするしぃ。 貴方、本当は正義だなんだって言いながら、ただ純粋に暴れたいだけなんじゃないのぉ? 『正義』を言い訳に使っちゃだめよぉ? 暴れん坊さぁん」 そして、水銀燈はわらった。 劉鳳さんとセラスさんを、心底馬鹿にするように。 そのとき、僕には水銀燈の声が聞こえた気がした。 『貴方たちの嘘はお見通しよ』って。 「貴様ッ!! 俺の正義を愚弄するかッ!!」 「ふざけんなッ!! それ以上言うとぶっ飛ばすよ!!」」 反射的に、2人が水銀燈に詰め寄った。 怒りに震える2人とは対照的に、水銀燈は身じろぎ一つしない。 そして先に水銀燈に掴みかかったのは、セラスさんだった。 水銀燈の胸元を掴むと、小さな水銀燈の体は軽々と持ち上がる。 「自分の嘘を棚に上げて好き勝手言いやがって……訂正しろ!」 セラスさんの目は、赤く、獰猛な獣の目そのものだ。 それでも水銀燈は怯まない。 「なぁに? 反論できなくなったら暴力で解決するのぉ? ホント野蛮ねぇ、あんたたちの『正義』って。 ……悪いんだけど、服にシワが付いちゃうから離してくれない?」 「コイツ……!」 セラスさんの空いているほうの手が、強く握りしめられる。 そして、水銀燈の顔面に向かって、 振りぬかれ―― 「止めなさい! 何やってるのよ!!」 病室内に、凛さんの声が響いた。 病室の入り口には、見張りに立っていた凛さんとドラえもんの姿があった。 「……!」 セラスさんの拳が、水銀燈の目の前で止まる。 その余勢が、水銀燈の髪を揺らす。 そして、次の瞬間―― 「ああ、怖かった……ちょっと凛! もっと早くに助けに来てよぉ……」 今までからは信じられない、とても儚げで弱々しい泣き顔で水銀燈は凛さんを見た。 「あんたたち2人にならここを任せておけると思ったのに……残念だわ」 凛さんの表情は、とても険しかった。 「……セラス、水銀燈を離して。話はそれからよ」 「何があったの?」 その凛さんの言葉は、この部屋にいる全員に対してのものだった。 凛さんは、喧嘩を始めた2人に怒っているようだった。 間髪いれずに水銀燈が喋りだす。 「聞いてよ凛、この人達、私とお喋りしてたらいきなり怒り出して殴りかかってきたのよぉ」 セラスさんも黙ってはいない。 「よくも出任せをいけしゃあしゃあと! コイツはあたし達の仲間と、劉鳳の正義を侮辱したんだ! 劉鳳に謝れ!」 「謝るのはそっちでしょぉ? 証拠も無いのに人のことを『嘘吐き』だの『敵』だの…… それに殴りかかってきたのはあんたじゃないの。私は何もしてないわよぉ?」 「コイツ、まだそんなことをッ!」 反射的に水銀燈に伸びたセラスさんの手を、途中で凛が止める。 「止めなさい。それ以上やると私が相手になるわよ」 「ちょ、ちょっと! 凛はソイツのことを信じるの!? いい加減騙されてるって気付きなさいよ!!」 「冷静にいまの状況だけを見れば、セラスが水銀燈を殴ろうとしている。それだけよ。 理由が何なのかは知らないけど、それすら知らないままに目の前で仲間が喧嘩するのを黙って見過ごす訳にはいかないわ」 「だ、だから私たちの言ってる方が……」 「水銀燈の言ってることの方が本当だよ!!」 部屋中の、全ての目が僕を見つめていた。 「の、のび太君、それってどういう……?」 ドラえもんの言葉を最後まで待たずに、僕は話し出す。 「水銀燈は、自分の妹がどうなったのか、どうして死んだのか、それを劉鳳さんに聞いていただけなんだ。 なのに、2人とも水銀燈のことを嘘吐きだ、敵だって決め付けて…… それに水銀燈の妹が死んだのって、劉鳳さんのせいなんでしょ!? 水銀燈が怒るのも当然だよ!! なのにセラスさんは水銀燈のことを殴ろうとするし…… 正しいのは水銀燈だよ! その2人は喧嘩が、殺し合いがしたいだけなんだよ!!」 そう、一気に言い切った。 ――そうだ。劉鳳さんとセラスさんより、凛さんと水銀燈の方が信じられる。 凛さんと水銀燈は、昨日はほとんど僕と一緒にいて、怪我を治してくれて、僕のことを護ってくれた。 でも、劉鳳さんとセラスさんは、ついさっき会ったばかりなんだ。 しかも、水銀燈が襲われたミオンっていう人と仲間だって言うし、 それに不二子っていう人とも……! 口の中が乾く。喉がひりひりする。 自分が、肩で息をしていることに気付く。 肺の中の空気が空っぽになったみたいだった。 「の、のび太君、私たちは貴方達のことを思って……」 「じゃあ、なんで嘘吐いてたの!? 化け物だって、なんで黙ってたの!?」 『化け物』という言葉に、セラスさんの表情が陰る。 それと同時に、酷いことを言ってしまったのだという罪悪感で、胸が締め付けられる。 でも、僕は悪くない。悪いのは、嘘を吐いていたセラスさんの方なんだから。 重苦しい空気が病室内に充満していた。 誰も話し出そうとしなかった。 自分の荒い息の音だけが、いやにうるさく聞こえていた。 でも。 「Master!」 何処からともなく聞こえてきた無機質な声が、病室内の静寂を乱した。 そして、レイジングハート――という名の魔法の杖に急かされたように、凛さんが話し出す。 「ありがと、レイジングハート。皆に先に言っとかなきゃならないことがあるから、それを先に言うわ。 ――この病院に近づいてくる人間がいます。それも、一人で」 凛さんの言葉に、みんなの表情が強張る。 「一人って、それって……」 「ええ、偽凛のこともあるけど、この時間帯で単独行動をとるような奴は……人を殺して回っている、凶悪な殺人者の可能性が低くない。 新たな獲物を探して徘徊しているのかもしれない」 「さ、殺人者!?」 ドラえもんと、僕が震え上がる。 でも、ううん、それは違う。 僕はもっと前から震えていたんだから。 ――だって、僕はずっと、人殺しかも知れない人と一緒にいたんだから……。 凛さんが話を続ける。 「そいつは結構なスピードでまっすぐここに向かってきてたんだけど、さっきから急にスピードが落ちたわ。 もしかしたら、戦闘の痕跡を見て警戒しているのかもしれない。……油断はできないわよ」 「ちょっとまって、そいつ、もしかしたら敵じゃなくて私たちの仲間かもしれないよ! 私達の集合場所はここなんだし!」 「そうだ! それに敵が襲ってくるというならば、この俺がッ!」 「待って!」 今にも病室の外へ飛び出そうとする2人を凛さんが呼び止める。 「劉鳳、アンタは怪我人でしょ。……悪いけど戦闘になったら足手纏いよ。 セラスもここに残って。劉鳳とドラえもん、のび太を任せるから。もしものときは皆を守って頂戴」 「で、でもっ、私達の仲間なら、私達が行ったほうが……! それに、凛一人だけだと危険かもしれないしっ!」 それでも食い下がるセラスさんにも、凛さんは譲らない。 「大丈夫よ。アンタ達の仲間の情報なら、既に教えてもらってる。 それに……一人で心配なら、水銀燈も連れて行くわ。いいわね、水銀燈?」 「わたしはいいけどぉ?」 「ちょ、ちょっと! そいつなんて連れて行ったら余計にややこしいことに……」 「今の頭に血が上ってるアンタを連れて行くよりはまだマシよ」 セラスさんの不満も、凛さんが一蹴した。 そうだ。凛さんの言うとおりだ。 人殺しの仲間なんて連れて行ったら、凛さん達の方が危なくなってしまうに違いない。 「Master! The target is coming into the enter! (マスター、対象が玄関に到達します!)」 「わかった、レイジングハート。セラス……水銀燈と何があったのかは知らないけど、話は後でちゃんと聞くからね。 じゃあ、私が玄関で対象と接触します。行くわよ水銀燈! 病室の皆は、何かあったら頼むわよ!」 凛さんのテキパキと指示を出していく様子が、改めて緊迫した状況を際立たせていた。 でも、水銀燈を連れて行くのは……やっぱり凛さんも他の2人よりも水銀燈の方を信用しているということなのだろうか? 凛さんにも早く教えてあげないと。この2人が危険だっていうことを。 「じゃあ、行ってくるから! でも、危なくなったら私たちのことは放って、逃げて!」 そう言い残すと、凛さんは水銀燈を連れて廊下を走りだした。 2人分の足音が、どんどん遠くへ消えてゆく。 そして、病室内はまた、静かになった。 ドクン。 ――ちょっとまった。 ドクン。 ――今ここにいるのって、 ドクン。 ――僕と、ドラえもんと、 ドクン。ドクン。 ――劉鳳さんと、セラスさん。 ドクン。ドクン。 ――でも、劉鳳さんとセラスさんが、 ドクン。ドクン。ドクン。 ――僕の思っているとおりに、人殺しと仲間だったなら。 ドクン。ドクン。ドクン。ドクン。 ――それどころか、人殺しそのものだったなら。 ドクン。ドクン。ドクン。ドクン。ドクン。ドクン。ドクン。 ――こんなところにいたら、殺されてしまうじゃないか!!!! ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン 「ど、ドラえもん、僕たちも行こう!!」 そう叫ぶや否や、僕はドラえもんの手を掴むと、一気に病室の外へ走り出した。 「お、おいのび太君!?」 背中で劉鳳さんが僕を呼ぶ声が聞こえたけれど、気にしない。 「の、のび太君、一体どうしたんだ!?」 ドラえもんが叫ぶけど、あとまわし。 いまは、とにかくあの2人と離れないといけない。それだけを考えていた。 なんだか息が苦しくて、喉を押さえた。 そして、喉を少し引っ掻いた。 ★ 遠坂凛と水銀燈は、病院玄関の物陰に隠れ、様子を窺っていた。 カズマという異能者が破壊したという病院のロビーは惨憺たる光景ではあったが、瓦礫のせいで死角が多い。 決して油断はできない。 「どう、レイジングハート? 相手は今どの辺りにいる?」 凛がレイジングハートに問いかける。 「Around the entrance door. But I can’t find out exactly.(玄関ドアの周辺と思われます。細かい場所までは分かりません) そして、レイジングハートは即座に答える。 このやり取りも何度も繰り返すうちに、ずいぶんとスムーズに行われるようになっていた。 これを信頼の賜物、というのは過剰な表現なのだろうか。 「いい、水銀燈、いつかみたいに先制攻撃するのは無しよ。平和的な交渉が第一。一応、万が一には備えておいて欲しいけど」 「分かってるわよぉ、心配いらないわぁ」 水銀燈が答える。こちらもスムーズに意思疎通が図られる。 では、彼女らの信頼は如何ほどのものなのだろうか? この病院において、凛の水銀燈に対する信頼が大きく揺れているのは、 もはや火を見るよりも明らかな事実である。 だが一方で、凛は水銀燈を完全に敵だと、自分を騙し誑かす獅子身中の虫であると断定できずにいる。 ――もし、もっと早く水銀燈のことを凛に打ち明けていれば、凛も素直に聞き入れてくれたのだろうか? 「……来るわよ!!」 凛の体が緊張する。だが―― 「そこに誰かいるのか!? 待ってくれ! 俺は敵じゃない! 警官だ!」 ロビーの中に聞きなれない男の声が響き渡った。 「ちょっと、凛どうするつもり?」 「シッ、黙って!」 男の声は続く。 「俺の名前はトグサ! 人を探している! 仲間がこの病院に居るはずなんだ! こちらから危害を加えるつもりは無い! 話だけでも聞いてくれ!!」 「トグサ? トグサって、セラス達が言ってた仲間の中にいたわよね?」 「確かにね。でも、偽名だってこともあるわよ? ついさっき自分の名前を使われたの忘れたのぉ?」 「うるさいわね、分かってるわよ! でも、タイミングが良すぎる。やっぱり本人の可能性も……」 だが、そんな凛と水銀燈が躊躇するのを見越したかのように、男が先手を打ってきた。 「わかった。ほら、俺が先に姿を出す。ほら、手を上げたぞ。危害は加えない。だから話だけでも聞いてくれ!」 物陰から窺う限り、確かに男は両手を上げて、無防備な姿を晒している。 一見して、敵対心が無いのが見て取れた。 少なくとも、凛にとっては。 凛が、男に呼びかける。 「わかった。私は凛。私も無駄に争うつもりは無いわ。待ってて、今そっちに――」 そう言いながら凛が物陰から姿を現した瞬間だった。 凛は、男の顔が見えなかった。東向きの玄関から差し込む朝日に包まれて、男の顔が光の中に紛れてしまっていたからだ。 でも、男は凛の顔が良く見えたに違いない。 そして、凛が太陽光に目を細めている間に。 男は、凛めがけて発砲した。 その銃声に僅かに遅れ、水銀燈の黒羽が男に襲い掛かる。 そのおかげで、男は次弾を発射する暇なく物陰に退いた。 「ぐッ、やっぱりアイツ、敵だったみたいね……!」 「人の言葉をホイホイ信じるからそうなるのよ。おばかさぁん」 物陰に身を潜めた凛は、痛みに顔を顰めながら右肩に触れる。 大丈夫、バリアジャケットのお陰で貫通はしていない。 でも、右手が痺れる。衝撃を完全には吸収しきれなかったようだ。 これでは、当たりどころによっては致命的な傷を負ってしまうかもしれない。 「でも、どういうことなの!? あいつは確かにトグサと名乗ったけど……やっぱり偽名だったの?」 「かもねぇ。それとも、あのトグサって奴がもともとそういう危険な奴なのかもしれないわよぉ? 気付かない? アイツ、前にここ、病院で戦った奴じゃないの?」 「……そういえば、あんな顔してたっけ。武器も銃だった。 それに、アイツいい腕してるわね……初めから肩を狙って撃ってた。あの僅かな間で正確に」 「さしずめ、戦果を上げて根城に戻ってきた、ってところじゃないのぉ? 油断してると、貴方も撃墜マークの一つになっちゃうわよぉ?」 「冗談!」 凛は、ギリッと歯を食いしばる。 「……こんなところで……私は止まってる場合じゃないのよ。」 凛の口から漏れるその言葉は、独り言なのか、それとも凛の決意表明なのか。 「私の熾した火を、絶対消させたりなんかしない……絶対に!」 そして、凛が私――レイジングハートを強く握り締めた。 ――さあ、行こう。マイマスター。 そして、その私たちを嘲笑うかのように、ギガゾンビの姿が空に浮かび上がった。 6度目の放送が響き渡る―― 【D-3 病院 2日目・早朝】 【遠坂凛@Fate/stay night】 [状態] 魔力小消費、疲労、水銀燈と『契約』、右肩打撲 [装備] レイジングハート・エクセリオン(アクセルモード・全弾再装填済)@魔法少女リリカルなのは バリアジャケットアーチャーフォーム(アーチャーの聖骸布+バリアジャケット) デバイス予備カートリッジ残り33発 [道具] 支給品一式(食料残り1食。水4割消費、残り1本)、ヤクルト一本 エルルゥのデイパック(支給品一式(食料なし)、惚れ薬@ゼロの使い魔、たずね人ステッキ@ドラえもん 五寸釘(残り30本)&金槌@ひぐらしのなく頃に 市販の医薬品多数(胃腸薬、二日酔い用薬、風邪薬、湿布、傷薬、正露丸、絆創膏etc)、紅茶セット(残り2パック) [思考]基本:レイジングハートのマスターとして、脱出案を練る。 0:襲撃者(トグサ)の撃退。 1:水銀燈を監視する 2:劉鳳とセラスの治療を続行(だが、2人に僅かな疑惑を持っている。) 3:変な耳の少女(エルルゥ)を捜索。 4:セイバーについては捜索を一時保留する。 5:リインフォースとその持ち主を止める。 6:自分の身が危険なら手加減しない。 [備考] ※レイジングハート同様、水銀燈に対して強い疑心を持ち始めました。 ただし、水銀燈を信じたいという気持ちもあり、中途半端な状態です。 ※緑の髪のポニーテールの女(園崎魅音)の判断は保留。 ※夜天の書の持ち主が水銀燈ではないかと疑い始めています ※リリカルなのはの魔法知識、ドラえもんの科学知識を学びました。 [推測] ギガゾンビは第二魔法絡みの方向には疎い(推測) 膨大な魔力を消費すれば、時空管理局へ向けて何らかの救難信号を送る事が可能(推測) 首輪には盗聴器がある 首輪は盗聴したデータ以外に何らかのデータを計測、送信している 【水銀燈@ローゼンメイデンシリーズ】 [状態] 服の一部損傷、消毒液の臭い、魔力小消費、疲労、凛との『契約』による自動回復 [装備] 真紅のローザミスティカ [道具] 支給品一式(食料と水はなし) ストリキニーネ(粉末状の毒物。苦味が強く、致死量を摂取すると呼吸困難または循環障害を起こし死亡する) ドールの螺子巻き@ローゼンメイデン、ブレイブシールド@デジモンアドベンチャー、照明弾 ヘンゼルの手斧@BLACK LAGOON、夜天の書(多重プロテクト状態) @魔法少女リリカルなのはA s くんくんの人形@ローゼンメイデン、ドールの鞄@ローゼンメイデン 、透明マント@ドラえもん [思考]基本:魔力補給を考慮して、魔力を持たない強者を最優先で殺す。 1:凛が偽名を使っていたことや見解の相違を最大限利用して仲たがいさせる。 2:チャンスがあれば誰かを殺害。しかし出来る限りリスクは負わない。 3:凛との『契約』はできる限り継続、利用。殺すのは出来る限り後に回す。 4:ローザミスティカをできる限り集める。 5:凛の敵を作り、戦わせる。 6:あまりに人が増えるようなら誰か一人殺す。劉鳳に関しては、戦力にするか始末第一候補とするか思案中 7:青い蜘蛛にはまだ手は出さない。 [備考]: ※透明マントは子供一人がすっぽりと収まるサイズ。複数の人間や、大人の男性では全身を覆うことできません。また、かなり破れやすいです。 ※透明マントとデイパック内の荷物に関しては誰に対しても秘密。 ※レイジングハートをかなり警戒。 ※デイパックに収納された夜天の書は、レイジングハートの魔力感知に引っかかることは無い。 ※夜天の書装備時は、リインフォース(vsなのは戦モデル)と完全に同一の姿となります。 ※夜天の書装備時は、水銀燈の各能力がそれと似たベルカ式魔法に変更されます。 真紅のローザミスティカを装備したことにより使用魔法が増えました。 ※リインフォースは水銀燈に助言する気は全くありません。ただし馬鹿にはします。 ※水銀燈の『契約』について:省略 ※水銀燈ver.リインフォースの『契約』について 魔力収奪量が上昇しており、相手や場合によっては命に関わります。 ※水銀燈の吐いた嘘について。 名前は『遠坂凛』。 病院の近くで襲われ、デイバックを失った。残ったのはドールの鞄とくんくん人形だけ。 一日目は、ずっと逃げたり隠れたりしていた。 【ドラえもん@ドラえもん】 [状態]:中程度のダメージ、頭部に強い衝撃 [装備]:虎竹刀@fate/stay night [道具]:支給品一式(食料-1)、"THE DAY OF SAGITTARIUS III"ゲームCD@涼宮ハルヒの憂鬱 [思考・状況] ジャイアンの死にかなり動揺したものの、のび太がいることもあり外見上は落ち着けている。 1:の、のび太くん!? 2:アルルゥを探す 3:自分の立てた方針に従い首輪の解除に全力を尽くす 基本:ひみつ道具と仲間を集めてしずかの仇を取る。ギガゾンビを何とかする。 [備考] ※Fateの魔術知識、リリカルなのはの魔法知識を学びました。 ※凛とハルヒが戦ってしまったのは勘違いに基づく不幸な事故だと思っています。 偽凛については、アルルゥがどうなっているか分かるまで判断を保留。 【野比のび太@ドラえもん】 [状態]:ギガゾンビ打倒への決意、左足に負傷(行動には支障なし。だが、無理は禁物) [装備]:強力うちわ「風神」@ドラえもん [道具]:支給品一式(食料-1)、翠星石の首輪、エンジェルモートの制服@ひぐらしのなく頃に [思考・状況] 精神が不安定。疑心暗鬼に陥り始めている 1:劉鳳とセラスから離れたい。 2:ドラえもん達と行動しつつ、首輪の解除に全力を尽くす。 3:なんとかしてしずかの仇を討ちたい。 [備考] ※劉鳳とセラス、及びその仲間を殺人者だと思い込んでいる。 ※凛のことも疑っているが、他の人よりは信頼している。ただし、偽凛は敵だと判断している。 【劉鳳@スクライド】 [状態]:全身に重いダメージ、若干の疲労が残る。 [装備]:なし [道具]:支給品一式(-3食)、SOS団腕章『団長』@涼宮ハルヒの憂鬱、ビスクドール [思考] 基本:自分の正義を貫く。 仲間、闘う力のない者を守ることを最優先。 悪の断罪は、守るべき者を守るための手段と認識。 1:のび太とドラえもんを守る(対水銀燈を含む) 2:病院で凛の手当てを受ける。 3 ゲームに乗っていない人達を保護し、ここから解放する。 [備考] ※ジュンを殺害し、E-4で爆発を起こした犯人を朝倉涼子と思っています。 ※朝倉涼子については名前(偽名でなく本名)を知りません。 ※凛は信用している ※水銀燈は全く信用していない。自分達を襲った犯人もひょっとしたら? と思っている ジャイアンの死の原因となった戦闘は自分の行為が原因ではないかと思っています。 【セラス・ヴィクトリア@HELLSING】 [状態]:全身打撲、裂傷及び複数の銃創(※ほぼ全快) [装備]:対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(残弾:6/6発)@HELLSING、アーカードの首輪 13mm炸裂徹鋼弾×36発@HELLSING、スペツナズナイフ×1、ナイフとフォーク×各10本、中華包丁 銃火器の予備弾セット(各40発ずつ、※Ak-47、.454スカール、S W M19を消費。デバイスカートリッジはなし) [道具]:支給品一式(×2)(メモ半分消費)(食料-2)、糸無し糸電話@ドラえもん [思考] 基本:トグサに従って脱出を目指す。守るべき人を守る。 0:銃声……!? 1:劉鳳、のび太、ドラえもんの護衛(対水銀燈と他の優勝狙いの参加者) 2:劉鳳のフォロー。 3:食べて休んで回復する。 4:病院を死守し、トグサ達を待つ。 [備考] ※セラスの吸血について:略 ※現在セラスは使役される吸血鬼から、一人前の吸血鬼にランクアップしたので 初期状態に比べると若干能力が底上げされています。 ※凛を全面的に信用しています。偽凛は敵だと判断。水銀燈は敵だと判断し、要警戒だと思っている トグサは、改めて自分の武器を握り締める。 銃の残弾は5発、リロードのロスを考えると、乱射するだけの余裕は無い。 一発で無力化しようと試みたのだが……相手の特殊な防弾具と仲間の存在から、失敗に終わってしまった。 ――今のが少佐にばれたら、またどやされちまうな。 だが、自嘲気味に口元を緩めるトグサの目は、笑わない。 トグサは、この病院に来るまでに無数の戦闘の痕跡を目にしてきた。 そして、この病院の玄関もまた、盛大に破壊されている。 そして、その戦闘痕は、トグサ仲間のもの――劉鳳やセラスとは、別の何者かによるもののようだった。 ということはつまり、自分の知らない何者かがここで戦闘行為を行った、と見て間違いない。 さらに問題なのは、トグサの仲間……劉鳳たちは先に病院へ向かったはずだし、 ドラえもんとのび太の2人もここに居たはずなのだ。 だが、その病院で待っていたのは、戦闘のあった跡と、かつて自分たちを襲った二人組。 トグサは確信していた。 『俺の仲間は病院でこの2人と出会い、戦闘行為に巻き込まれたのだ』と。 以前にもこの2人組は、問答無用でトグサ達に襲い掛かってきた。 ならば、この2人組がトグサの仲間と出くわしたなら、どうなるか? ――こいつらに躊躇など無用だ。 なんとかこの2人組を撃退し、仲間の無事を確認しなければならない。 それに、俺が時間を稼げばトウカ達が病院に来るかもしれない。 今俺がすべきことは……ッ!! 「クソっ、皆、無事でいてくれよ……!?」 【トグサ@攻殻機動隊S.A.C】 [状態]:疲労と眠気、SOS団団員辞退は不許可 [装備]:S W M19(残弾5/6発)、刺身包丁、ナイフとフォーク×各10本、マウンテンバイク [道具]:デイバッグと支給品一式×2(食料-4)、S W M19の弾丸(34発)、警察手帳(持参していた物) 技術手袋(使用回数:残り16回)@ドラえもん、首輪の情報等が書かれたメモ1枚(内部構造について追記済み) 解体された首輪、フェイトのメモの写し [思考] 基本:情報を収集し脱出策を講じる。協力者を集めて保護。 1:以前襲撃してきた「2人組」を撃退。その上で病院内に仲間がいないか探索。 2:病院にて①ドラえもん、のび太、劉鳳、セラス、ジャイアンと合流。カズマの行動についての経緯を問い質す。 ②ハルヒとアルルゥがいるかを確認。いないようなら彼女らを捜索。 3:病院に人が集まったら、改めて詳しい情報交換を行う。 4:機械に詳しい人物、首輪の機能を停止できる能力者及び道具(時間を止めるなど)の探索。 5:ハルヒからインスタントカメラを借りてロケ地巡りをやり直す。 6:情報および協力者の収集、情報端末の入手。 7:エルルゥの捜索。 [備考] ※風、次元と探している参加者について情報交換済み。 時系列順で読む Back 暗闇に光る目 Next 第五回放送 投下順で読む Back 暗闇に光る目 Next 第五回放送 257 プリズムライト(前編) 遠坂凛 264 SECRET AMBITION 257 プリズムライト(前編) 水銀燈 264 SECRET AMBITION 257 プリズムライト(前編) ドラえもん 264 SECRET AMBITION 257 プリズムライト(前編) 野比のび太 264 SECRET AMBITION 257 プリズムライト(前編) 劉鳳 264 SECRET AMBITION 257 プリズムライト(前編) セラス・ヴィクトリア 264 SECRET AMBITION 257 プリズムライト(前編) トグサ 264 SECRET AMBITION